肩の上の秘書
Real intention and stated reason
僕らは大人なので、一応、相手の気持ちや置かれている立場など状況を考えて、思った言葉をオブラートに包んで、或いは時には嘘をついて社会生活を送っています。今回は短く、本音と建前というお話。
とは言いながら、冒頭の書き出しも本音じゃぁない。他人様の気持ちじゃなくて自分の立場や周囲の目、どう思われるかの方が大事だったりするんで、本音が言えないと言った方が正確だろう。
星新一氏の『肩の上の秘書』は正にそんなお話。
時代は近未来。あるセールスマンが自社製品を売り込むべく個人宅を営業していた。セールスマンの肩には1羽のインコが止まっていて、個人宅の玄関に出てきた住人も肩にインコを乗せている。
サラリーマンは肩のインコに語り掛ける。
(買え)
すると、インコは流暢にこう喋り出した。
「お忙しいところ恐れ入ります。本日は我が社自慢の商品についてご案内差し上げに参りました」住人の肩のインコがそれを訳す。
参考:星新一『肩の上の秘書』より
(どうやら、営業に来たようです)
それを受けて住人がインコにぼそぼそと呟く。
(で、何?)
それをインコが訳す。
「それはそれはどうも。ではお話を聞かせて貰えますか」
こういうやり取りが続く如何にも僕好みでくだらない、いや、ユーモアの世界。
普段スケジュールで忙殺されるほどでもないし、スケジュール管理ができないほど年寄りでもないので、秘書が欲しいと思ったことはないが、こういう秘書なら欲しいって正直思う。
長らくブログをご覧いただいているレアでコアなみなさんは、ちょいちょい…いや結構な頻度で僕が本音を漏らしていることをご存知でしょうが、ブログ上だけだと思ったら大間違い。サラリーマンのように「買え」って言ってるんですよ普段から。イケてないデザイン見ると「ダッサっ!」て言い、予算もないのにあれやこれや言ってくると「それ必要ありますかねぇ」って言う始末。
もし肩にインコでも乗っててくれてたら、もう少し仕事が増えるかも知れないと思うくらいには正直です。
結局、サラリーマンは一個も売れず上司に説教を喰らう。当然、その上司の肩にもインコが乗っている。
仕事が終わるとインコを片付け、ウキウキでクラブに足を運ぶ。クラブのママの肩にもインコが。
参考:星新一『肩の上の秘書』より
インコが語りかける。
「あら~~~やっと来てくれたのね。あなたが来ないと寂しくて……」
そのうち人の気持ちや感情を修正して、相手に不快な思いをさせない「翻訳機」みたいなものがGoogle先生あたりが出してくるんじゃなかろうか。
顔に出ちゃう人とか本音が見え隠れする人って実はホッとします。自分も進んで本音を隠す方ではないので、そう思うのかもしれませんが、腹の中が見えない人ほど怖いなぁって思います。笑顔で核ミサイルのボタンを押せちゃうようなサイコパス的な怖さがありますよね。
本音が伺い知れないまま人間関係を円滑に進めていくことに、いったいどんな意味があるんだろう。クラブのママが待ってたのは客の財布なわけで、それがわからず額面通り言葉を受け取った結果、本音じゃないと知ったらどういうトラブルになるか。それを考えるとゾッとします。
相手が肩にインコを乗せていれば、インコが言ってる内容が本音じゃないことは判るはずなので、本人がインコに囁いてる言葉を知りたくなるのが人情。
きっと本音解析機能付インコは高額に違いない…なんて考えながら肩のインコをしまっているところです。
肩の上の秘書
というお話でした。
~ 本文で紹介された書籍をご紹介 ~