青い目茶色い目

青い目茶色い目 ~ デキる子デキない子

青い目茶色い目

A class divides

以前、責任感について、リンゲルマン効果 (Ringelmann effect) で話をしましたが、その際に全体の意識を高めて効果を出すためのヒントとなる話をすると予告していました。今回は思いやりというお話。

1968年4月、米アイオア州の小学校で、当時酷かった人種差別に心を痛めた小学校教師がとある実験を行いました。TV中継もされた有名な実験で、動画も上がっているので是非、見て欲しい。
子どもたちの表情が現実を物語り、先生の言動一つ一つが本質を突きます。
青い目 茶色い目 ~教室は目の色で分けられた~

3年生のあるクラスを、青い目と茶色い目の子どもに別ける。
1日目は「青い目の子はみんな良い子。だから5分余計に遊んでいいし、給食をおかわりしてもよろしい」。
「茶色い目の子はダメな子。水飲み場を使ってはいけないし、給食をおかわりをしてはいけない」というように、青い目の人は優れた人、茶色い目は劣った人決めつけて1日を過ごす。

2日目は立場を入れ替えて、茶色い目は優れた人、青い目は劣った人とする。劣っている方には、黒い襟を付けさせて判りやすくする。

すると、わずか15分で子どもたちは状況に適用し、優れている方が劣っている方をイジリはじめ、劣っている方は黙ってうつむいていく。

なんと開始からたった15分で、クラスの中に社会の縮図ができ上った。
この実験中、さらに付随実験として、実験をはじめる2週間前と実験をしている2日間、そして実験の2週間後に、国語と算数のテストを行った。
この実験で判ったことはこのようになった。

・子どもたちが差別される側の気持ちを理解し人種差別に対する考え方を変えた
・付随実験のテストの点数が、優れてる人の時の方が、劣った人の時よりも高得点だった
・さらに実験後は、クラス全体の成績がかなり高くなった

わずか2日間の実験で、子どもたちは大切なことを学び、優れている人の時の高得点を維持できるようになった。この実験を行った教師ジェーン・エリオット先生は、退職後、人種差別がなくなることを願って全米各地の刑務所や企業で、この試みを行っていますが、大人にも子どもにも人種差別と真剣に向き合い人種差別を身近なものとして捉えることを可能にした。

参考: 後に ピグマリオン効果 (Pygmalion effect) で取り上げてます

注目すべきは、立場を入れ替えて、同じ体験をさせたというところで、子どもたちは実験終了後のディスカッションで、相手の立場や思いやりについて口にしている。

仕事でも同じことが言えるのではないでしょうか。ディレクターはデザイナーやコーダーの立場に立って、デザイナーはこの後コーディングするコーダーの立場に立って、コーダーはデザインを忠実に再現するためにデザイナーの立場に立って、そして全てのクリエイターはユーザーやターゲット、クライアントの立場に立って制作し、思いやりをもって関係者と接することが求められているのです。煩雑な状況の中でも、余裕をもって遂行する事が重要ということなのかもしれません。

また、チーム全体を底上げするには、チーム全員を「優れている人」に持っていかなければいけません。エリオット先生は、言葉で優劣をつけ、言葉で良くできたときに誉めました。「誉めて伸びる子」っていうのも、あながち間違ってなさそうです。言葉や態度を工夫するだけで、効果があるならやってみて損はありません。

言われる方は褒められて悪い気はしないでしょうし、成功体験って必要ですよね。その記憶があるからモチベーションとして成立するのでしょう。
優劣の劣の方は使わず、毎日毎日「優れてる人」をすり込んで行ったら、チームやプロジェクト、組織の意識が高くなり、これまで以上に成果が出せるかもしれません。
実際に子どもたちは試験で良い結果を出しました。

今度は大人の番ですね。

青い目茶色い目

というお話でした。