餅の的

餅の的 ~ 豊穣のシンボル

餅の的

round rice cake

あけましておめでとうございます。昨年お世話になった人もお世話にならなかった人も、本年は、いや、本年こそはよろしくお願いします。元日なので、それに相応しい、お正月にまつわる話題を一つ。今回は食べ物の恨みのお話。

日本人は古来から、お餅をハレの食べ物としてきた。稲に魂が宿るという日本人独特の感覚ゆえのものかもしれない。
山城国や豊後国に残る『 餅の的 』という民話がある。

むかしむかし、田野(たの)という稲作で毎年豊作な地域がありました。
ある時、田野の人々はお米を作る苦労やありがたみを忘れてしまい、
「今年も豊作で食べきれないから、取れたお米でお餅を作ろう」
「お餅を作ってもまだ余るから、お酒を造って飲みまくろう」

お米でお餅やお酒を作っている内は良かったのですが、ある若者がこんな事を言い出しました。
「ここにある鏡餅、どうせ食べきれないのだから、これを矢の的にしないか?誰が一番上手に当てるか、腕比べをしようではないか」

若者たちはワイワイ言いながら鏡餅にひもを付け、庭先に吊り下げました。
一人の男が弓に矢をヒュンと放ち、見事、餅の的に命中。
すると餅の的に矢が当たった途端、不思議な事に餅は真っ白な鳥となって、南の空へと遠く飛んで行ってしまいました。

そしてそれ以来、田野では少しもお米が取れなくなって、とても貧しい生活を送ることになってしまったそうです。

参考:民話『餅の的』より

その後、その白い鳥たちが飛んできたとされる各地で、稲が豊作となったり、餅となったり、さらに数千株の芋となったりといった地域伝承があります。
つまりお餅は豊穣のシンボルというわけです。

この地域伝承ですが小さいときにみんなも一度くらいは叱られたことありませんか? 食べ物で遊んじゃいけません! って。

鏡餅は一年を守護する歳神様への供物とされてますので、罰当たりにもなりますから、粗末に扱わないように28日か30日から松の内まで飾って、刃物を使わずに割っておいしく食べましょう。

本年もよろしくお願い致します。

餅の的

というお話でした。