ロバを売りに行く親子
Man his son and the donkey
世の中には人の意見に左右され過ぎちゃって、自分の意思を持たず、流されるままに行動してるんじゃないかと感じる人が一定数存在している。今回はみんなにいい顔して、兎に角すり寄ろうとする八方美人のお話。
ミーティングや交流会など、人が集まって意見や情報を交換したり何かを決めなきゃいけない席で、態度をコロコロ変える人が居る。 例えば、個々に発言してる中で、ある人が発言するとその意見に賛同したかと思えば、反対意見が出るや否や今度はそっちの意見にも同調する。 なんなんだろう…場を支配したいんだろうか。いや、そんな能力はなさそうだ。 では何か目的があるんだろうか。そういう賢い感じでもない。 おそらく本人に悪気はないのだろう。 周りの反応や人の顔色を伺いながら、無意識に反応してるように見える。 個を消しているというか、要するに空っぽな状態。 イソップ寓話にこんな話がある。
ある男とその息子がロバを売るために町へ向かって歩いていた。
すると、通りすがりの村人に、
「お前たちバカだな。ロバは乗るためにあるんだろ?」
と言われ、そりゃそうだと息子をロバに乗せた。 すると、
「あの怠け者の小僧を見てみな。自分はロバに乗って、親父を歩かせてるぞ」
と言われたので、息子を降ろして男がロバに乗った。
すると今度は、「呆れた! あのぐうたら男、子どもを歩かせてるよ」
と嫌味を言われたので、ならばと男は息子をロバの上に引っ張り上げて二人でロバにまたがった。
これで大丈夫と思ったら、「あんたら二人が乗ったんじゃ、ロバが可哀想じゃねぇか」
と言われたので、男と息子はロバを担いで歩くことにした。
親子は道行く人々皆に嘲笑される中、橋にさしかかった。その時、ロバが暴れて橋から転げ落ち、ロバは川で溺れて死んでしまった。そして、それまで二人の後をずっと歩いていた老人が事の一部始終を見ていてこうつぶやいた。
「これで、わかっただろう。みんなを満足させようとすると、結局誰も満足させることはできんのじゃ」
処世術として、相手を観察してアプローチの方法や手段を変えるのは間違いじゃないし、場の空気を読んで周囲との関係を円滑にするためなら理解できなくもない。
自分と意見が同じだから、その人の側につくってことはあるだろう。しかし、逆の意見に対しても同調し、しかも終始その調子となれば話は別だ。
そもそも何のための集まりで、なぜ招集されたのかを考えるべきで、みんなが時間を割いて話し合う場で八方美人を発動している場合じゃない。
思考を停止し、判断力も決断力も発揮しない状態であっちにフラフラこっちにフラフラ、話し合いの場をいたずらにかき回すだけかき回して、いずれの意見にも組せず、だからと言って新たな選択肢も提供しないでは「八方美人」と陰口を叩かれて遠ざけられても、後ろ指さされてもしょうがない。
考えられないんじゃない、判断できないんじゃない
他者との関係づくりは簡単じゃないが、誰からも疎まれたくない、嫌われたくないという保身から八方美人を発動してるとしたら、それはむしろ逆効果。
周囲とうまくやろうと思うあまり自分を押し殺したり、もともと流されやすい性格で周りの意見に左右され、言われるがまま場当たり的に対応していることが、結果的に相手に不信感を与えたり不快にさせ、円滑な人間関係が築けないとしたら、こんな不幸で切ないことはない。ましてや何かを決めなきゃいけない席でこんなことをされたら堪らない。
最近、組織のトップや会社の上層部など、責任的な立場に就いてる者が決断しない、責任を負わないという事例が多過ぎる。全て保身のため、言い逃れができるようにするために逃げ道を用意し、意図的にやっているので卑怯な上に質が悪い。能力も資質も人の上に立つ器ではない。ロバ売りの男のようにロバを死なせてしまうのがオチだろう。
自分ならこうする、こう考える、場合によってはどっちでもいいっていう選択もあるだろうし、ディスカッションで認識が違っていて意見を変えることがあってもいい。
今まで考えたことも経験したこともないようなことが議題なら、みんなの意見を聞いて、その場で考えて判断し、決断すればいい。
考えられないんじゃなく、考えないようにしてる。
判断できないんじゃなく、判断しないようにしている。
出した応えが拒絶されるのが怖い、堪えられない。どこかでそういう思いがあるのかもしれません。意見を否定されたからと言って、人格を否定されてるわけじゃないし、自分と同じ意見の人も居るかもしれない。
どんな時でも自分の考えや意見は持っておくべきで、その意見や考え方に他人は惹かれていくんだろうし、同じような考え方を持つものが集まってコミュニティができるんだろうと思うので、どういう人なのかわからないと、なかなかコミュニケーションを取りやすい環境や関係性は築けないだろう。
どういう立場で発言し、どういう考え方でこのような意見を持つに至ったのかを話し合うのが健全な集まりのあるべき姿で、はじめから多数決で多い方に加担しようと考えてる人は改めた方がいい。
どちらに加担しようとも、空っぽな八方美人は仲間としては受け入れてもらえないのだから。
ロバを売りに行く親子
というお話でした。
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ゲツコーギルド合同会社 CEO兼プロデューサー
2016年に東京下町から瀬戸内の離島に移住。クリエイターの働き方や人財育成、再生、地域でのクリエイティブやICTを活用したブランディングや地域創生、事業再生を得意としたプロデュースやディレクションで活躍中。メガネ&広島弁や伊予弁など方言女子が大好物。個人的には懐古的なモノがスキ。ネガティブ属性だがユーモアを忘れない。1970年 江戸下町産。