三人のレンガ職人 ~ 10年後のキャリアパス

三人のレンガ職人 ~ 10年後のキャリアパス

三人のレンガ職人

Three Brick craftsman

この話を目にしたときに何やら既視感を感じました。絶対知ってる話なんだけど一向に思い出せないでいました。そんな時、クライアントのヒアリングについて、WEB制作では目的が重要だとセミナーで話してる途中で思い出しました。見直してみたらやっぱりそうでした。しかも瓜二つな内容。今回はキャリアパスというお話。

思い出した話とは、以前コラムで書いた『三人の石切職人』とタイトルもそっくりでした。元ネタはこっちのレンガ職人なのかもしれませんね。イソップ寓話『三人のレンガ職人』はどんな話かと言えば、こんな感じ。

旅人が道を歩いているとレンガを積んでいる3人の職人に出逢う。
旅人は「ここで何をしているのですか?」と尋ねる。
1人目の職人は「レンガを積んでいるのさ」と、辛くて不公平だと不満を募らせ不機嫌そうに答えた。
2人目の職人は「大きな壁をつくっている」と、家族を養うために仕事があって感謝している様子だ。
3人目の職人は「歴史に残る偉大な聖堂を建てている」と、周りの幸せを願いつつ教会をイメージしていた。

イソップ寓話『三人のレンガ職人』

石切職人がレンガ職人に置き換わっただけのような気もしますが、ところどころ内容に違いがありますし、同じ着地ではこのコラムも芸がないので、違う着地点にしようと思います。

さて、レンガ職人は旅人の質問に対して、1人目は作業について答え、2人目は手段について答え、3人目は使命を答えました。
またまた既視感。なんだこれ、これとよく似た状況、最近もあったような。そうだ、WEBデザイナーを目指している勉強中の人たちによく似てるんだ!
殆どの人は1人目、極稀に2人目、3人目は殆ど居ないと言っていいでしょう。視野が狭いってことと大局が見えてない、全容がわかってないっていうこと、そして余裕のない心情の表れだと思うのです。
何をしているのか?に対して「デザインしています」「コーディングしています」そう答えるのが精いっぱいなんだと思います。勉強中ですから無理もないですよね。

では勉強中でないWEBクリエイターは3人目のように答えられる人がどのくらいいるでしょう。使命感を以て制作にあたっているクリエイターがどのくらいの割合でしょうか。
1人目のように「デザインしてます」「コーディングしてます」と答えるか、2人目のように「WEBサイトを創ってます」「公式サイトを創ってます」って答えるか、あるいは3人目のように「クライアントの未来を創ってます」「ユーザーの夢を叶えています」と答えるでしょうか。

この話には続きがあって、3人の10年後が描かれています。

1人目は10年後も同じように文句をいいながらレンガを積んでいた
2人目はレンガを積むよりギャラのいい、危険を伴う教会の屋根の上で作業している
3人目は建築現場の施工管理者として任されるようになり、のちに出来上がった大聖堂には彼の名前が付けられた

イソップ寓話『三人のレンガ職人』

意識の違い、考え方の在り様で、こんなに差がついてしまいました。
コラムの趣旨からは外れちゃいますが、普段から何事に於いても3人目のような答えをしている人とは仲良くなれないなぁっていうのが正直なところですけど、みなさんがクライアントの立場だったら、何人目のレンガ職人に仕事を依頼されますか。答えは明らかですよね。

「ここで何をしているのか?」と尋ねた旅人の答えによって、その先の展開が良くも悪くも変わる。これって「ABC理論」という現象なんですけど、それについてはまた別の機会に。

WEBクリエイターを目指して勉強中のみなさんは、なぜWEBクリエイターを目指そうと思ったのでしょう。キッカケや実現させたかった何かを初心にかえって思い出してみるといいかもしれません。勉強に追われ、課題に追われて、余裕がなくなってくるとWEBクリエイターになること自体が目的となってしまい、勉強が終わったら抜け殻になっていたり、行先を見失っている人を見かけます。その結果、1人目や2人目のレンガ職人のようになってるとしたら、その10年後はどうなっているか、想像に難く無いでしょう。

仕事としてWEB制作に携わってる人はどうでしょう。タスクや納期に追われて「デザインしてる」「コーディングしてる」と無意識に答えてませんか。言われたことだけをただただ作業としてこなしている状態はクリエイターではなくオペレーター。言われたとおりにレンガを積んでるんだと苛立ちながら答えてる様子や高額ギャラに飛びついて炎上している様子によく似ています。

みなさんのキャリアパスはどこに繋がっているでしょう。10年後みなさんが果たしてどのような立場で何をしているか、今の仕事に対する姿勢や考え方で大きく変わるかもしれません。

三人のレンガ職人

というお話でした。