虚飾で彩られたカラス
The Bird in Borrowed Feathers
自信がないというクリエイターや強みがないという駆け出しクリエイターのみなさんが、いろんなものに手を出す光景を目にします。知見を広げたり関連する知識や情報によって得意分野を深めるのは大賛成。ですが…今回は虚像についてのお話し。
最近こんな相談をよく受けます。
WEBマーケティングをやった方が(やっといた方が)いいでしょうか?
こう問いかける人たちの殆どが駆け出しのクリエイターで、経験や実績が乏しく思うように仕事が取れなかったり、遣りたい仕事ができてなかったりして、焦りやフラストレーションから何かしなきゃ!っていう思いがあるのでしょう。
要するに自分のスキルに自信が持てないからメニューを増やすためにあれやこれやとやり始めるんですよね。特にこの1年、コロナの影響もあって業界は通常とは違う動きを見せています。
東日本大震災の時もそうでしたが、有事で通常営業ができない状況下に於いて情報商材やマーケティングといった形の無いものや成果が怪しいものが流行る傾向はあって、それを取り入れようとする俄か人口が増えるんです。
有象無象が動き出し、新たなものをつくる技術も予算もないけど既にあるものを伸ばしましょうという名目でネットビジネス界隈が賑わいます。
普段発言してなかった人が映像や音声、SNS上での発言をやり始めて、吊り情報も含めた露出が増えることで駆け出しクリエイターが煽られ、WEBマーケをやるべし!ってなる構図です。
あなたは何屋さん?
WEBマーケをやった方がいいか?という質問に対しては「どっちでもいい」が答えです。
逆に僕から質問「あなたは何をする人ですか?」
何をする人かによって業務に必要と思うならやればいいし、そうじゃないならやらなくていい。答えはいつだってシンプルです。お客さんになる人もきっと「何をする人なんだろう?」って問いかけをしてくるはずです。
これってイソップ寓話の『おしゃれなカラス』に似ていると思いませんか?
鳥たちが水浴びをしている池に神様(ゼウス)が現れて「この中で最も美しい者を王様にする」と言いました。
大慌ての鳥たちは口々に羽や頭の飾りを自慢し合い、猛アピールをはじめます。
ある美しい鳥が黒いカラスに気づき「あら、あなたはなぜここにいるの?あなたが選ばれるわけもないのに」とあざ笑い、他の鳥たちも「ホント滑稽だわ」と馬鹿にして笑います。
カラスは悔しく思いながらも何も言い返すことができません。
みんなが去った後、黒い姿に引け目を感じていたカラスは池に落ちていたキレイな鳥の羽根を、自分の体を覆い隠すかのように刺していきました。
真っ黒だったカラスはさまざまな鳥の羽根飾りで、とびきりの美しい鳥になりました。
自分に引け目を感じているので、他人の羽根を借りて多彩でプロっぽく見せようとする姿は正に黒いカラス。だけどキレイに飾ったところでそれは所詮借り物の羽根。要するに他力本願、虎の威を借りているにすぎません。
自分に生えてる羽じゃないのですから、いずれ底が浅いことがバレてしまいます。
そして王様が決する運命の日、一際は目立つキレイな羽根で着飾ったカラスが姿を現します。
神様も集まった鳥たちも「こんなに美しい鳥は見たことがない」と口々に賞賛し、この美しい鳥を王様にしよう」と神様が宣言しました。
ところがある鳥が「あら、これは私の羽根じゃないの」とその一際キレイな鳥の羽根を指しました。
するとまわりの鳥たちも「これは私の羽根だわ」と次々に自分のものであろう羽根を抜きはじめ、みるみるうちに元の真っ黒なカラスに逆戻り。それどころか散々つつかれて元の姿よりも無残な姿になってしまったのでした。
僕も過去に企業のマーケティング室に在籍したり、コンサルファームでマーケティングに携わったこともありますが、僕自身をマーケターやアナリストと思ったこともないし、そう名乗ったこともありません。業務としてマーケティングをやると営業したことも宣伝したこともありません。
それは身近にスペシャリストを見てきたし、リスペクトもしてるのでマーケティングができると言うのもおこがましいし、はばかられますよね。
企業や事業の課題解決や更なる推進をクリエイティブで実現するWEBプロデューサーであり、プロジェクトや制作チーム、クリエイターをマネジメントすることが僕の仕事なので、その辺はちゃんとわきまえてるつもりです。
今は未熟でも目指してるものがあったと思います。制作ならデザイナーかコーダーかディレクターか。目指していたものをクリエイターとして目指す。結局それがクリエイターとして認められる一番の近道だと思うのです。
どちらにしてもコロナが緩和されて通常営業に戻ったら、口々にマーケティングと言ってた人たちも、怪しい吊りツイートも影を潜めます。一過性のものです。
カラスが自身の黒い姿を受け容れ、その黒い羽に磨きをかけていれば結果もまた違っていたかもしれません。
みなさんは池の畔でキレイな羽根を探して虚像を創り上げるつもりですか?
それとも自分の羽に磨きをかけて自分らしさを手に入れますか?
煽りのツイートに惑わされずに軸をブレさせないように進んで欲しいと思います。
虚飾で彩られたカラス
というお話でした。
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