恋するライオン ~ 牙を失ったクリエイター

恋するライオン ~ 牙を失ったクリエイター

恋するライオン

The lion which is in love

クリエイターやエンジニア、WEB制作に携わる人は何かしら武器になるもの、つまり得意なものや強み、他には負けない何かを持っているだろう。でもそれを封じられたり、取り上げられたとしたら。ということで、今回は武器というお話。

誰にでも得意な分野や大好きな分野を持っていて、それが自分の最大の武器になることは知っています。フリーランスならばなおのこと、その武器を最大限に、効果的に発揮してクライアントを獲得しなければなりません。しかし実態はどうでしょう。武器を武器として使えていれば問題はないのですが。

ライオンが人間の娘に恋をした。
ライオンは父親に娘をくれと訴えるが、父親は可愛い娘を恐ろしいライオンの嫁にするなど考えられなかった。

毎日毎日娘を嫁に欲しいと訴えるライオンに、父親は「その牙と爪は娘を傷つけるからダメだ」とライオンに言うと、ライオンは牙と爪を必死になって痛みに耐えながら抜いた。
そして、喜び勇んで娘をもらいに行くと、父親は「武器を失ったライオンなど恐ろしいものか」とライオンを殴り倒した。

イソップ寓話の『恋するライオン』というお話です。
父親の立場で考えれば心情としては良くわかりますが、ライオンのことを思うとなんかちょっぴり切ない話です。
人の言う事を軽々しく信用して、自分の武器を捨ててしまうと、それまで自分を怖がっていた相手にも、やすやすと負かされてしまうというわけです。

全くその通りだと思いませんか。
ライオンがそれだけ真剣な恋をしていたことは置いといて、実際の商談でみなさんはライオンと同じ行動をとっていないと言えますか?

自分の武器は「これなんです」とクライアントに見せたときに、クライアントの反応があまり良くなかったとしましょう。クライアントは質問の仕方を変え「こういうことはできますか?」と、自分が得意じゃない分野の提案をしてきます。そのときあなたは「あまり得意じゃないし、好きな分野でもないんだよなぁ…だけどお金になるからやるって言っちゃおうか」と脳内でシミュレーションをして答えます。
このときあなたは、ライオンの爪や牙と同じように、自分の武器を一つ捨てたことになりはしないでしょうか。

その結果、例えばホントはJSやPHPをガリガリ書いて、インタラクティブに動かすのが大好きで、得意中の得意なのに、入ってくる仕事と言ったらテンプレートでガチガチに固められたECサイトの下層展開のコーディングで、単なるHTMLのページ量産だったとしたら、明らかに風下に立たされたことになります。
つまり牙を抜かれたライオンのように、大人しく従順で巨大な猫になってしまったわけです。

考え方は人それぞれなので、それが傍から見て良いか悪いかという話ではありません。自分がそれで納得しているのかどうかだと思うのです。武器を奪われても死にはしないが、仕事をしなければ死んでしまうと考える人もあれば、武器が使えなくなったのならもはやクリエイターではないと考える人も居るでしょう。
でも、ただ一つ言えるのは、日々何となく流されて武器を失った事にすら気付かずに過ごしていたら、フリーランスとして或いは個人事業主として、この先続けていけるわけがないことはハッキリしています。

武器は持っているか、その武器は武器として使えているか。この機会に自身の武器について、見つめ直してみるのもいいのではないでしょうか。

恋するライオン

というお話でした。

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