三人の石切職人

三人の石切職人 ~ 経営者向きのモチベーション

三人の石切職人

Three carving craftsmen

以前、本ブログで、どうせ働かなければならないのなら楽しくやろうという類の話をしたことがある。とは言うものの、そういう想いを何もないまま持ち続けるのは難しい。やはり動機づけのようなものは必要。そこで今回はモチベーションというお話。

デザインにしてもコーディングにしても、企画・設計やディレクション、プログラミング、デバッグ、どんな仕事にしても、仕方なくやるより楽しんでやるとか使命感をもってやるとか、何かポジティブに仕事と向き合える方法があるといいですよね。

「マネージメントの父」と呼ばれる経営学の第一人者、 ピーター・ファーディナンド・ドラッカー(Peter Ferdinand Drucker)は、『経営論』の中で「三人の石切職人」の話を書いている。

その昔、一人の旅人がある街を通りかかり、そこで石を運んでいる石切職人に出逢った。旅人は石切の仕事に興味を持ち、3人の石切職人にそれぞれこう尋ねた。
「何をしているのですか?」
1人目の石切職人は、何を当たり前のことを聞くんだというイラついた表情で「金を稼ぐために石を切り出してんだよ」と答えた。
2人目の石切職人は、汗を拭いながら無表情で淡々と、
「一番の石切技術を身につけるために壁を作ってんだよ」と答えた。
3人目の石切職人は、空を見上げて目を輝かせながら、
「教会を作っているんだ。私が作った教会で多くの人が祈り、人々の安らぎの
 場となる。それを夢見て石を切っている」と答えた。

1人目は生活のため、2人目はスキル向上のため、3人目は人の役に立つためと答えた。考え方や心構え次第で同じ仕事でもこれだけ見え方が異なる。実際、1人目の答えが偽らざる労働の目的で、大部分の人がそう答えるだろう。

ドラッガー氏は『経営論』の中で、3人目が経営者としては相応しいと言っているが、ここで重要なのは、どれが正しいかではなく、どういうモチベーションで働いている?ということ。

1人目は仕事から得られるインセンティブを知っていて、兎に角それを効率よく得ようとしている。一日分の報酬に対して一日分の仕事をきっちりとやり遂げる。
2人目はスキルを上げるために積極的に仕事をこなし、技術を身につけようと必死で働くだろう。職人や起業したい人に多いタイプかもしれない。
3人目は大局を見ている。全体の動きや流れを把握していて、さらにユーザーが何を望んでいて、何を実現すれば喜んでもらえるかを常に考えている。

どうせ働かなければならないのなら3番目のような「いいことしてる」とか「誰かの役に立ってる」みたいな社会的貢献や「笑顔が見られる」「感動させられる」のような心に残る仕事をしたいですよね。

働くためのモチベーションは人それぞれ。働かせるためのモチベーションつまり誰が経営者に向いているか。1人目と2人目は個人の目的達成に、3人目は働く意義そのものにフォーカスしている。
そういう経営理念を持つ企業や職場を構築できるという意味で、ドラッガー氏は3人目が経営者向きだと断言しているのだろう。

モチベーションの持ち方一つで、仕事が楽しくも詰まらなくもなる。そう考えるとポジティブ・シンキングは正直シンドイ時もありますが、心がけ次第で気分が上がり、気持ちよく仕事ができる組織で、みんなが前向きになれるなら安いもんだと思わなくもない。

三人の石切職人

というお話でした。