光の宮殿
Palace of the light
こういう仕事をしていると、毎日のようにアイデアを求められる。アイデアを求められることも提案することも好きでやってることなんで苦にはならないし、それ自体は楽しんでやっている。発想の転換というお話。
低予算で提案を求められたときどうします?
ある王様が自分の後継者を選ぶために3人の王子を呼び「おまえたちの宮殿を1週間以内に何かでいっぱいにしてみよ。ただし、使える費用はコイン1枚だけだ」と命じた。そして3人の王子は考えた。
参考:「大富豪インド人のビリオネア思考」
1番目の王子は、コインで安いワラを買い集め、宮殿に敷き詰めるが2/3程しか埋まらず、王様はガッカリして次の宮殿に向かう。
2番目の王子は、なんと街中のゴミをかき集めて、ゴミで宮殿をいっぱいにしたが、その強烈な臭いに王様は眉をひそめて宮殿をあとにする。
3番目の王子は、宮殿からありとあらゆるものを運び出し、宮殿内の壁や床をピカピカに磨き上げた。広く静まりかえった部屋や廊下の燭台に火が灯され、その光がピカピカの壁や床を照らして神秘的な輝きを放っていた。
王様は夜になってから訪れ、その光景を見るなりこう言った。
「なんという美しさだ。だが王子よ、予は何かで宮殿をいっぱいにせよと申しつけたはず。その約束はいったいどうなった」
王子は微笑みながら「いいえ王様、宮殿内はどこもかしこも灯りで照らし出されています。私は光で宮殿をいっぱいにしたのです」と答えた。
王様はその答えに満足し、3番目の王子を後継者に決めた。
冒頭に書いたように、あらゆる場面で「何かない?」って気楽に聞かれることはよくある。
予算はないけど低予算で変わったことがやりたいという要望は、どこの企業も、どんなプロジェクトでもあるあるでしょう。
でも普通にやったら面白くないし、予算もそれなりなので凝ったことはできない。とはいえ普通にやってもダメ。
だからと言って、クライアントも冒険することはごくごく稀で、最初はその気はあるんだろうが、だんだんカタチが見えてきて現実味を帯びてくると、そんなつもりはなかったと言わんばかりに方向転換。一転して無難な路線に修正することはままあります。
「何か変わったことをしたい」とホントかウソか判らないようなお題を出しておきながら、こちらから提案すると大抵、軌道修正が掛かって最終的には面白味がまったくないテンプレート型のWEBサイト(ギルドではこれを「ダサイト」と言う)の出来上がり。
1人目の王子のように「要望の2/3で妥協」するケースは、WEB制作でも意外と現実的かもしれないが、中途半端なものが出来上がってしまう。
2人目の王子は突飛で奇抜なアイデアは個人的には嫌いじゃないけど、ある特定のマニアック路線に限定されるだろう。考え方としてはアリだと思う。
3人目の王子の案が通るためには、条件として受ける側のユーモアセンスや、それを受け入れるだけの度量が必要だろう。
しかし残念ながら、そういうセンスや度量、懐の深さは、多くの日本企業があまり持ち合わせていないようだ。殆どが1番目の王子の妥協案として2/3か1/3で満足するような、こじんまりまとまった残念な結果が待っている。
ハッキリ言ってWEB制作は安かろう悪かろう。
だからコイン1枚で無理難題をやらせることは、物語であろうと現実社会であっても認められないが、ここで問題なのはコストや予算の問題ではない。
制作会社やクリエイターは予算がなければないなりにできることを提案するだろう。低予算で考えろと言われれば、3人目の王子のような発想の転換でそれなりのアイデアや方法、手段は提示できる。
そう考えてギルドは、3人目の王子の様にいつもユーモアを大事にした提案を行い、他の企業やサイトとは違ったWEB制作を心がけている。
光の宮殿
というお話でした。
~ 本文で紹介された書籍をご紹介 ~
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ゲツコーギルド合同会社 CEO兼プロデューサー
2016年に東京下町から瀬戸内の離島に移住。クリエイターの働き方や人財育成、再生、地域でのクリエイティブやICTを活用したブランディングや地域創生、事業再生を得意としたプロデュースやディレクションで活躍中。メガネ&広島弁や伊予弁など方言女子が大好物。個人的には懐古的なモノがスキ。ネガティブ属性だがユーモアを忘れない。1970年 江戸下町産。