才能は、授かりもの
Given to Give
ギフト(Gift)とは、英語で「贈り物」を意味する言葉ですが、もう一つ、「天賦の才能」という意味もあります。デザイナー、コーダー、プログラマー、ディレクター、イラストレーター、ライター。クリエイターやエンジニアは、誰でもなれる職業ではありません。個性・適性・持って生まれた感性、その人だけが持つギフトがあります。今回は、「才能」というお話。
ギフトとクリエイターの才能
制作のマッチングサービスやクラウドソーシングを見ていると、クリエイターの才能を軽んじた条件が平然と掲載されていることがあります。それに見合った対価を支払う意識のない発注者が一定数存在するのは、残念ながら事実です。
ただ、自称レベルからプロフェッショナルまで一括りにはできませんが、デザインやコードで生計を立てているクリエイターは、概ね才能を持っている人だと言えます。
日本では才能を「もって生まれてきたもの」と解釈することが多いですが、英語圏ではその捉え方が少し違います。
英語の “Gift” は「Giveを語源とする贈り物」であり、「天(神)が与えてくれたもの」を指します。キリスト教的な世界観では、才能は神から授けられたものという考え方が根付いているのです。
そう解釈すれば、できる人とできない人の差があること、選ばれし者が存在することも、自然に腑に落ちます。
ギフトが持つもう一つの意味
ところで、贈り物を表す英語には、もう一つ “Present” という言葉があります。“Present” には、「今、現在」という意味もあります。「今があることこそプレゼントだ」という言葉を、聞いたことがありませんか。
実は、この二つの意味は、語源でもつながっています。元になったのは、ラテン語で「そこにある」を意味する praesens です。そこから、「目の前に差し出されたもの」という意味が生まれました。
一方、ギフトは、「与える」を意味するゲルマン語に由来します。つまり、どちらも「贈り物」を意味しながら、語源はまったく異なります。
才能を「天から授かったギフト」と捉えてみましょう。すると、才能を活かして人の役に立つことが、誰かへのプレゼントになります。そして、素敵な言葉の連鎖だと思います。
ギフトを授かった者の使命
以前、『草枕 ~ 人の心を豊かにするが故に』の回で、漱石の言葉を紹介しました。
あらゆる芸術の士は人の世を長閑にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。
出典:夏目漱石 著『草枕』より
同じ作品には、「使命」という言葉も出てきます。
ここに詩人という天職ができて、ここに画家という使命が降る。
出典:夏目漱石 著『草枕』より
才能というギフトを授かった人には、使命があると思います。人の世を長閑にし、心を豊かにするという使命です。そのため、才能に見合った対価と、敬意ある環境が必要です。
また、日本にはお中元という習慣があります。ただ、形式だけの贈答より、日頃の感謝を伝える方が大切です。ギフトを授かった人たちの労をねぎらい、感謝の言葉を掛けてみませんか。
クリエイターに無理難題を押し付けていませんか。たまには食事の席を設けて、日頃の労をねぎらってみてください。そして、そのひと手間が、思わぬ良い仕事につながることもあります。
ちなみに…
ちなみに、「ギフト」はドイツ語では「毒」を意味します。ところが、もとは同じ「与えられたもの」を表す言葉です。ドイツ語で「贈り物」は、Geschenk といいます。
「毒」になった理由は、はっきりしません。婉曲表現だったとも言われます。また、ギリシャ語の影響も指摘されています。薬の一回分を指す dosis は、もともと「与えること」の意味でした。実際、ドイツには「量が毒をつくる」ということわざもあります。
才能も、使い方次第で世を豊かにもし、傷つけることもあります。つまり、言葉の歴史が、それをさりげなく教えてくれているようです。
ギフトは与えられるものであり、使うものである。
才能という贈り物
というお話でした。
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参考・出展

ゲツコーギルド合同会社 CEO兼クリエイティブ・コンサルタント
約30年ほど前、インターネットの黎明期から企画・マーケティング、システムやネットワーク開発など、文字通りWEB業界を創ってきました。徐々に大規模プロジェクトが増えたことに伴い、プロデュースやディレクション、コンサルティング、マネジメントを求められるようになり、東日本大震災をきっかけに、フリーランスの地位向上と働き方の創出のために制作ギルドを創立。配信やセミナーなど育成や再生も開始し、デザイナーやコーダーはもちろん、ディレクターやプロデューサーも数多く輩出しています。