時計じかけのオレンジ(反省編)
A Clockwork Orange (Reflection)
先月『 時計じかけのオレンジ(変身編) ~ 人は変われるか 』について書きました。続きを書くと約束したので約束通りに。今回は同じ小説を少し角度を変えて見て見たいと思います。反省というお話。
誰にでも消したい過去や過ち、失敗の一つや二つあると思います。でも消すことも過去に遡って無かったことにすることもできない。
アンソニー・バージェス(Anthony Burgess)の『 時計じかけのオレンジ 』は、全21章から構成される小説なのですが、米国で最初に出版された際、バージェスの意図に反して最終章の第21章が削除されて出版されました。
現在は最終章を含めた小説が完全版として売られています。
因みに前回の変身編は完全版に基づいて書いています。
最終章の内容はこんな内容です。
しかし(主人公の少年、アレックスは)以前のように悪事を働いてもスッキリすることはなく、逆に倦怠感すら感じるようになっていた。
そんな時、かつての仲間と偶然再開し、妻ができて子どもが生まれたことを聞かされる。
18歳になっていたアレックスは、そろそろ女でもつくって落ち着こうと考えるようになる。このとき、暴力からの卒業を決意するが、自分に子どもができたら、きっと自分のように荒れた子どもになると急に心配になりつつ、みなさん、さらば。と締めくくる。
米国で最初に発売され、 スタンリー・キューブリック(Stanley Kubrick)によって映画化された『 時計じかけのオレンジ 』は、この部分が削除されているので、メッセージとしては「人間はそう簡単に変わらない(変身できない)」という結末になっています。
何とも後味が悪いエンディングだが、テーマとしては終始一貫していました。
消すことはできても無かったことにはできない
最終章を削除された事に当然不満を抱いていたバージェスは、本の「序文」の最後に、こんな文を残しています。
We can destroy what we have written, but we cannot unwrite it.
わたしたちは書いたものを削除することはできる。しかし書かなかったことにすることはできない。
バージェスは、削除された第21章を削除することはできても書かなかったことにはさせないという強い思いと、主人公アレックスに、これまでに起こったこと起こしたことを無かったことにすることはできないが、主人公がこれまでの行いを反省し、これから先の行いによって人々の許しが得られたら、記憶の彼方に消し去ってくれるかもしれないと言ってるようにも思えます。
過去の出来事をなかったことにはできないが、反省し、努力することで巻き返すことはできる。
同じ間違いを繰り返さないためにも、反省して真摯に向き合い、いつか笑い話になるくらいにね。
一度くらいはやり直すチャンスをあげる寛大さを持ちたいものです。
時計じかけのオレンジ(変身編)
というお話でした。
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ゲツコーギルド合同会社 CEO兼プロデューサー
2016年に東京下町から瀬戸内の離島に移住。クリエイターの働き方や人財育成、再生、地域でのクリエイティブやICTを活用したブランディングや地域創生、事業再生を得意としたプロデュースやディレクションで活躍中。メガネ&広島弁や伊予弁など方言女子が大好物。個人的には懐古的なモノがスキ。ネガティブ属性だがユーモアを忘れない。1970年 江戸下町産。