時計じかけのオレンジ(変身編)
A Clockwork Orange (transformation)
自分の嫌なところを直したい。ふとそんな風に思ったり感じたりすることってありますよね。しかし人はそう簡単に変わることなどできません。ましてや他人の思惑通りに自分を変えることなどできない。今回は変身というお話。
アンソニー・バージェス(Anthony Burgess)の『 時計じかけのオレンジ 』。
描写が過激だという理由で、タイトルは聞いたことがあっても内容は知らない人は多いのではないだろうか。掻い摘んで言うとこんな話。
主人公の少年アレックスは、少年でありながらえげつないくらいに悪の限りを尽くす手が付けられない悪党。しかしある時、仲間に裏切られてアレックスだけが実刑で服役することになる。
そんな中、減刑することを条件に今とは真逆ともいえる性格に変えてやるから、ある療法の被験者にならないかと政治家と精神科医に持ち掛けられ、一も二もなくそれに応じてアレックスは生まれ変わる。
穏やかな少年に変身して出所したアレックスを待っていたのは、かつての被害を受けた者たち。弱くなったアレックスに、これまでの仕返しとばかりに散々痛めつける。かつての仲間もそれに加わり、一度ならず二度までもアレックスを裏切り、絶望したアレックスは自殺を図る。
アレックスは政治的に利用されて被験者となり性格を変えることができたが、アレックスを取り巻く環境は以前のまま。
これではホントの意味でアレックスが変わったとは言えません。
小説の中でアレックスは「被害者から乱暴され、自分の身を守ることさえできず、俺は時計仕掛けのオレンジみたいじゃないか!」というシーンがあります。
見た目はオレンジでも、中身は機械のように決まった動きしかできない時計のようだという比喩。つまり変身する前の方が自分の意思で動いていた分、よっぽど人間的ということだ。この話にはまだ続きがある。
人は変わることができるか
このままではアレックスを被験者にした責任を問われると判断した政治家は、アレックスを元の状態にすることを精神科医に指示する。
指示通りアレックスは元に戻り、新しい仲間を集めて再び悪事を働くようになるが、以前のように悪事を働いてもスッキリすることはなく、逆に倦怠感すら感じるようになっていた。
そんな時、かつての仲間と偶然再開し、妻ができて子どもが生まれたことを聞かされる。 18歳になっていたアレックスは、そろそろ女でもつくって落ち着こうと考えるようになる。このとき暴力からの卒業を決意するが、自分に子どもができたら、きっと自分のように荒れた子どもになると急に心配にな、みなさん、さらば。と締めくくる。
変身するためには、自分の悪いところを改め、忠告に耳を傾けることはもちろん重要だが、それだけではなく周りの環境が大きく影響することと、気付かせてくれる身近な存在が必要なんだと改めて感じる。
そういう意味では、政治的意図があったとしても、一度善人になって生まれ変わった経験は、アレックスにとって決して無駄ではなかったようだ。
一方で、一部の人の思惑や外部からの強引な環境の変化は、ホントの意味で人を変身させることはできないと言うことだろう。
色々と考えさせられる物語です。
『 時計じかけのオレンジ 』については、次回また、取り上げるつもりです。
時計じかけのオレンジ(変身編)
というお話でした。
~ 本文で紹介された書籍をご紹介 ~
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ゲツコーギルド合同会社 CEO兼プロデューサー
2016年に東京下町から瀬戸内の離島に移住。クリエイターの働き方や人財育成、再生、地域でのクリエイティブやICTを活用したブランディングや地域創生、事業再生を得意としたプロデュースやディレクションで活躍中。メガネ&広島弁や伊予弁など方言女子が大好物。個人的には懐古的なモノがスキ。ネガティブ属性だがユーモアを忘れない。1970年 江戸下町産。