間歇強化

Intermittent reinforcement

何かに「ハマる」。短期間ハマる、長期間ハマる、 そういう時期ってありますよね。ハマるにもいろいろあると思いますが、今回は、使い方によっちゃぁ大変なことになっちゃうよっていう、ハマるというお話。

この「ハマる」っていうのは『 間歇（かんけつ）強化 』という心理原則によるもので、使い方を誤るとホントにヤバい。でもそうは言っても人の気持ちはなかなかコントロールできないから、意図せずハマっちゃうってことなんで避けようがない気もする。

さて、この間歇強化（部分強化ともいう）、解説する上である有名な実験があるので紹介しておく。その実験とは、アメリカの心理学者 バラス・フレデリック・スキナー氏（Burrhus Frederic Skinner）が行ったスキナーの実験というもので、実験の内容はこんな感じ。

レバーを押すと餌が出てくる装置Aと、レバーを押したらたまに餌が出てくる装置Bを使ってマウスの実験を行った。

実験は何回かレバーを押した後に、どちらも餌の供給を止めるという条件で行われた。

装置Aのマウスは、連続で出ていた餌の供給が止まると、お腹が空いたときだけレバーを押した。

装置Bのマウスは、全然餌が出てこなくなったので、レバーを何度も押し続けた。

この実験から、毎回もらえる報酬よりも、たまにしかもらえない報酬の方が熱中しやすいという結果が出た。

スキナーの実験は何度も行われていて、マウスだったり鳥（ハト）だったり、いろんな動物実験が紹介されているが、いずれも同じ実験結果だという。

この実験でわかることは、毎回同じ条件下で定期的に出てくる餌よりも、不定期に出てくる餌の方が魅力的に感じるということ。

実験からもわかる通り間歇強化とは、確実に報酬をもらえる時より報酬がもらえる頻度が少ない時の方が、報酬をもらえたときの快感が反比例して大きくなり、結果として、その余韻を味わうために何度も何度も継続してしまうという心理原則。言葉にするとちょっと怖い。

例えば恋愛で言うと、毎日、毎回、優しい人よりも、たまに優しくされたり、たまに無視されたりする方が気になってしょうがない。ツンデレは正にこれで、他人には見せない面を2人キリの時にたまに見せるデレデレが、とても嬉しく感じる。あるいはドSがたまに見せるMの部分とか、普段元気なのに、たまに元気がない姿を見ると凄く気になっちゃうとか、普段不愛想なのに目が合ったときにニコッとされると勘違いするとかとかとか。

反作用は命取り

でもこれ、気を付けないと逆に作用することもある。一番わかりやすい例はギャンブル。競馬でもパチンコでも何でもそうだが、毎回当たらない所に常習化する罠がある。

たまにしか当たらないが、当たった時のリターンが大きいので、その分、喜びも大きい。ビギナーズ・ラックなんて起ころうもんなら、次も当たる、ハズしても次は当たる、次は当たると、装置Bのレバーを何度も何度も押しちゃう。

ゲームでも次はクリアする、次こそは…と夜更かしするし、クレーンゲームでも、惜しければ惜しいほど小銭を貢いで、獲れたとしても、そのぬいぐるみは高くつくだろう。

ハマるものによっては、下手したら生活にも影響しちゃうし、最悪、身を亡ぼすから怖い。

仕事ではどうだろう。いい方に働けば、例えばあまり褒めてくれない上司が、ここぞって時に褒めてくれる。
たまにしか誉めないから、誉められた時は嬉しいし、誉められなかった時は、誉められたいと思うから次は頑張るという心理が働くでしょう。
よいリーダー、よい指導者、よい先生は、たまにしか誉めない。確かにいろんな指導書的な本には効果が薄れるから毎回誉めるなと書いてあります。

でも逆に作用すれば、それを悪用されることだって在ります。天性の素質で装置Bを操る奴やこの装置を悪用した仕組みが世の中には存在する。例えば悪しき習慣の過剰なノルマ。競わせて富と地位、名声をちらつかせ、飴と鞭でいいように操られてブラック企業の手先にさせられる。

忘れちゃいけない。僕らは知らないうちにその装置の中で一喜一憂しているということを。だから決してたまに報酬がもらえるとか、増額されるとか、いい思いをさせてもらえるからと言って、飼い慣らされていけない。常に意識してハマらないように自制したいものです。

このまま終ちゃうと後味が悪いので最後に時節ネタを。

もうすぐバレンタインデー。意中の人が居る人は、普段あまり見せない特別な面を見せましょう。ギャップ萌えでハマること間違いなしでしょう。

もしかしてキューピットが外して、次こそはとハマって数打ちゃ当たるって何度も矢を射ってくれるかも。アタックする人は健闘を祈る！いや祈ろう！

もし結果がダメでも、自棄を起こして決して装置のレバーを何度も何度も叩かないように。玉砕しちゃったらハマらなかったと諦めて、呑みにでも行きましょう！

間歇強化

というお話でした。