ないた赤おに
Red demon cried
子どもが読む絵本って、だいたいハッピーエンドなのが相場。何となく気持ちが温かくなりするものだ。なので、心を打たれてウルウルすることはあっても、哀しい気持ちになる絵本があるなんて思ってなかった。今回は親友というお話。
その絵本は『 ないた赤おに 』という話で、題名通り最後に赤鬼が大泣きするんです。ウッカリ立ち読みとかすると大変なことになるので、図書館で借りるか、買ってお家で読むことをお勧めします。あらすじはこんな感じです。
とある山奥に人間と仲良くなりたい赤鬼が住んでいた。
あるとき赤鬼は家の前に「心のやさしい鬼の家です。どなたでもおいでください。おいしいお菓子とお茶を用意して待ってます」という立て札を立てた。
しかし人間たちは警戒し、誰一人として赤鬼の家に遊びに来ることはなかった。それを知った友達の青鬼は、赤鬼の元を訪れて、
「ぼく(青鬼)が人間の村で大暴れするから、きみ(赤鬼)は人間を助けるために、ぼくをこらしめれば、きみはやさしい鬼だということがわかってもらえるだろう」
そう言って、青鬼は強引に赤鬼を連れて、人間達の村へと向かった。
そしてついに作戦は決行され、青鬼が村の子ども達を襲い、赤鬼がそれを懸命に助け、思惑通り赤鬼は人間と仲良くなり、村人達は赤鬼の家に遊びに来るようになった。
童話『ないた赤鬼』より
ここまでは、あると言えばある展開ですよね。こっから予想できる展開としては、
- 青鬼の提案に乗っかったとは言え、その後、青鬼をないがしろにしたので戒められるオチ
- 青鬼に悪いと思って、赤鬼は村人に正直に話して、青鬼も仲良く過ごしたって言うオチ
しかし答えはどちらでもありません。オチの前に、友達のために矢面に立って、その友達の願いを聞き入れてあげようなんて寛容に思える人ってどれだけいるでしょう。絵本の中だからできるんだって思いますよね。
予想される展開なら、この後、誤解を解いてめでたしめでたしって思いますけど、青鬼はもっともっと思慮深く、覚悟をもって臨んだことが伺えるオチを、この後迎えるのです。赤鬼が大泣きする理由が明らかになります。
人間の友達が出来た赤鬼は毎日毎日遊び続け、充実した毎日を送った。
しかし、赤鬼には一つ気になることがあった。それは、親友の青鬼があれから一度も遊びに来ないことだった。今こうして村人と仲良く暮らせているのは青鬼のおかげなので、赤鬼は近況報告もかねて青鬼の家を訪ねることにした。
しかし、青鬼の家の戸は固く締まっており、戸の脇に貼り紙があり、こう書いてあった。
「赤鬼くん、人間たちと仲良くして、楽しく暮らしてください。もし、ぼくが、このまま君と付き合っていると、君も悪い鬼だと思われるかもしれません。だから、ぼくは旅に出るけど、いつまでも君を忘れません。さようなら、体を大事にしてください。ぼくはどこまでも君の友達です」
赤鬼は黙ってそれを何度も読み上げ、涙を流して泣いた。
その後、赤鬼が青鬼と再会することはなかった。
童話『ないた赤鬼』より
親友は心の友になってしまいました。親友のために一肌脱いだってレベルじゃぁないですよね。単純にいい奴では片付けられない、なんともモヤっとする結末。
赤鬼の気持ちになると「やる瀬ない」って気持ちがピッタリとハマる。
青鬼の気持ちになったらどうだろう。これだけ相手を深く理解し、事の顛末まで先回りして、予測して、スッと身を引く覚悟が果たしてできるだろうか。そう思わせる相手が居るだろうか。
僕にはそういう人は居ません…ってオチだと思ったでしょ?残念ながら今回はそういうオチにはなりませぬ。
僕は青鬼の気持ち、少しわかるんです。一応、こう見えても集団を率いるボスなので、いつも革の盾くらいにはなろうと身構えています。
どちらかっつーと討ち死にって感じのイメージに近いですが、メンバーのために矢面に立って守りたいとは思っているのです。
縁あって集まったメンバーを愛してるので、メンバーでなくなったら別にどうでもいいんだけど、こちら側に所属してるうちは、革の盾の下でやくそうを持って必死に守るつもりなわけです。
…だれが革の盾や!青銅の盾くらいの力はあるし!
ないた赤おに
というお話でした。
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