金の卵を産むガチョウ

金の卵を産むガチョウ ~ 欲張りすぎた結末

富を増やすことと、富を生み出す力

Don’t Kill the Goose That Lays the Golden Eggs

毎日1個の金の卵を産む鳥を殺してしまった農夫の寓話です。そのため、愚か者の笑い話として語られてきました。しかし、卵だけを数えてガチョウを忘れる姿は、今の私たちの仕事にも重なり、投資・経営、・仕事・人間関係。欲張りすぎた結果、失うものは意外と大きいのです。今回は、「目先の利益」というお話。

金の卵を産むガチョウというの寓話

金の卵を産むガチョウは、イソップ寓話の中でも特に有名な一篇です。紀元前6世紀頃のイソップが語ったとされ、欲への戒めとして古代から読み継がれてきました。あらすじは次の通りです。

ある農夫が、毎朝1個ずつ金の卵を産むガチョウを飼っていた。農夫は卵を売って豊かになったが、やがて待ちきれなくなった。腹の中には金塊があると考え、ガチョウを殺して腹を裂いた。しかし、中身は普通のガチョウと変わらなかった。農夫は金塊を得られず、毎日の卵まで失った。

つまり、教訓は「欲張ると、持っているものまで失う」ということです。農夫の失敗は、卵という結果だけを見て、ガチョウという仕組みを見ていなかった点にあります。

金の卵を産むガチョウを殺す現代社会

しかし、この農夫を笑えますか。金の卵を産むガチョウは、現代の仕事のあちこちにいます。たとえば、毎月の数字だけを追っている会社員や、低い報酬で次々と作品を求められるクリエイター。

そのため、短期の成果を絞り出すほど、卵を産む力は静かに削られていきます。さらに、ガチョウが痩せていっても、卵が出ているうちは誰も気づきません。気づいた時には、すでに腹を裂いた後なのです。

ガチョウを育てるということ

では、どうすればよいのでしょうか。答えは単純で、卵を取りながら、ガチョウを太らせることです。スティーブン・コヴィーの『7つの習慣』でも、この寓話は「成果」と「成果を生む能力」のバランスとして語られています。

成果だけに目を向けると、成果を生む能力は枯れていく。逆に能力ばかりを磨いても、成果は生まれない。両者の均衡を保つことが、持続的な効果性の本質である。

クリエイターにとってのガチョウは、時間であり、体力であり、学ぶための余白です。つまり、休むことも、卵を産むための立派な仕事なのです。チームを預かる立場なら、メンバー一人ひとりがガチョウだと言えるでしょう。

ちなみに…

ちなみに、似た話は、世界中にあります。

まず、仏教説話集『ジャータカ』の「黄金の鴨」です。亡き父が黄金の鴨に生まれ変わり、貧しい妻と娘たちに羽を1枚ずつ届けました。ところが、欲を出した母親が羽を全部むしり取ると、羽は金ではなく、ただの羽に変わってしまいます。鴨は二度と戻りませんでした。

次に、ロシアの昔話「金の卵を産むアヒル」です。貧しい老夫婦は、悲しみの精にパンの皮を奪われ、その代わりに金の卵を産むアヒルを授かります。やがて店員が、アヒルの羽の下に「食べた者は皇帝になる」と書かれているのを見つけ、老夫婦の妻に頼んで焼かせました。ところが、留守の間に15歳の息子イワンが、そのアヒルを平らげてしまいます。

追い出されたイワンは、旅先の町で「最初に門をくぐった者を皇帝にする」という決まりのおかげで、本当に皇帝になりました。アヒルを狙った店員は何も得られず、ただ食べただけの少年が玉座に座ったのです。

ドイツにも、ペータースベルク山に12個の金の卵を抱いた金のガチョウがいるという言い伝えがあります。多くの人が掘り返しましたが、誰も見つけていません。

日本でも「金の卵」という言葉は、高度経済成長期に、地方から集団就職で都会へ出た中学卒業生たちを指して使われました。働き手を卵に見立てた、少し切ない呼び名です。

卵を数える前に、ガチョウを見ろ

金の卵を産むガチョウ

というお話でした。

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参考・出典

李澤珍「『金の卵を産む鵞鳥』の飼主」(SGRAかわらばん)

「Golden Fowls」(『ジャータカ』の黄金の鴨を収録、Pittsburgh大学)