この瞬間を生きる
Be in this moment
壇上でおもむろにスマホを取り出しパシャっと一枚。すぐさまTweetして、面白い話を期待しないでくれというこの男性は、米Twitter社CEO ディック・コストロ氏。2013年5月、ミシガン大学の卒業式の冒頭シーン。自身の経験を交えたスピーチを紹介する。即興というお話。
彼が学生だった青春時代、役者を目指して芝居クラスを選択したことを切欠に、卒業後は劇団に入り役者を目指していた。とりわけ即興劇に興味が及んで、即興コメディーにのめり込んだ。その即興劇団で彼はその後の人生を左右する、大きな教訓を得たと言う。
ある日のリハーサルで演技中に良いフレーズが浮かんだので、あの手この手でそのセリフが違和感なく言えるようにみんなを誘導していた時のこと、監督がその芝居を止めてしまった。思い浮かんだフレーズは言えずじまい。それどころか、演技を止めた原因は彼にあったのだ。
監督は彼に向かって、こう言った。
次にどんなセリフを言うかなんて考えちゃダメだ! 台本なんてない!即興とはその瞬間の想いを表現することなんだぞ! 次のセリフを考えたところで、君が思うような展開にはならないし、こんなはずじゃなかったって君も周りもがっかりするだけだ。
この時、この瞬間を感じるんだよ。
みんなもちょっとやめて考えてみるんだ。
この瞬間だけを見るんだよ!
その後、役者として大成しなかった彼は、いろんなサービスを立ち上げ、ついにTwitterを世に送り出す。
しかし自分たちが世に送り出したTwitterは、自分たちが意図しなかった想定外の使われ方によって世界中に広まることになる。
例えば、オバマ大統領の大統領選の勝利宣言に使われたり、東日本大震災で電話が不通の時に代替通信手段として使われたり、中東で反体制派のコミュニケーションツールとして使われたり…自分たちでは考えつかないような、思いもよらない展開に戸惑ったようだが、彼はスピーチでこんなことを言っている。
自分にどんな可能性があるか、社会にどんな影響を与えるか、予想することや計画することなどできない。そして既にそれがすぐそこまで来ていたとしてもそれに気が付かないんです。また物事の意味や価値というのは、物事が起きた後に他者が決めることなのです。
つまり、いくら事前に綿密なシナリオ考えていたとしても、その通りに進む事の方が稀だということだ。
まぁ、世界レベルで流行るサービスですから、想定内で進むようなものなら誰にだって考えつくだろうし、想定できる範囲内で達成できる偉業ではないだろう。
彼は続けてこうも言っている。
未来に期待しても何も生まれない。だから自分が大好きなことをまずはやることです。誰かの指示で “やらなきゃいけないこと” をこなす毎日は詰まらないでしょう。自身が主役の舞台なのにどうしたらいいか判らず、与えられた役割をタダこなしたその先に、いったい何があるでしょうか。
社会を変えろだなんて、大それたことを期待しているわけではありません。ここでみなさんにお伝えしたいのは、勇敢に選択し、賭けに出て、とにかくやってみれば、世の中に影響を与えることに繋がると信じて活動して欲しいってことです。
これまでは学生として “やらなきゃいけないこと” をこなし、単位を取って卒業に漕ぎ着けた。そうやって頑張ってこられたのは、卒業や就職といった学生としてのゴールを用意されていたからに他ならない。
しかし、ここから先はゴールは誰かが用意してくれるわけでもなければ、導いてくれるわけでもなく、自分で決めて進まなければいけないのだ。
最後に彼はスピーチをこう締めくくっている。
これからの人生は即興の連続。勇敢に大胆な選択をしてください。
怖がることはありません。覚えておいてください。
そして次に “何をすべきか” をあまり考え過ぎず、あなたの人生を生きてください。
どんな人生であろうと今この時、この瞬間を楽しんで。
その瞬間から得られるすべてを吸収してください。
そこに台本などないのですから。
ありがとう!
学生から見たら身が引き締まる思いかもしれないが、僕から見ると肩の力が抜けるいいスピーチだと思った。
自分で思い描いたシナリオはその通りには進まない。いろんなハプニングが巻き起こり、その都度、即興で演じることになり、結果として想定外の大作になるかもしれない。
みなさんの物語は、どんなものになるだろう。もしかすると不本意なものになるかもしれないが、その物語の価値は他者が評価して決まるものなのかもしれない。
いつかその物語を持ち寄って、語らう日を楽しみにしよう。
この瞬間を生きる
というお話でした。
~ 本文で紹介された動画をご紹介 ~
You Might Also Like

ゲツコーギルド合同会社 CEO兼プロデューサー
2016年に東京下町から瀬戸内の離島に移住。クリエイターの働き方や人財育成、再生、地域でのクリエイティブやICTを活用したブランディングや地域創生、事業再生を得意としたプロデュースやディレクションで活躍中。メガネ&広島弁や伊予弁など方言女子が大好物。個人的には懐古的なモノがスキ。ネガティブ属性だがユーモアを忘れない。1970年 江戸下町産。