ホワイダニット
Why done it ?
ミステリー小説には「フーダニット(Whodunit)」「ハウダニット(Howdunit)」そして「ホワイダニット(Whydunit)」という三つのジャンルがある。犯人より、手口より、動機に迫る物語が一番人の心に刺さると言われている。今回は、ホワイダニットを入口にした、動機とクリエイティブ というお話。
ミステリーが「動機」に迫る理由
ミステリーの醍醐味は「犯人探し」だと思われがちだが実は、最も人の心を揺さぶるのは「なぜ、その人は犯行に及んだのか」という動機の部分だ。
フーダニット(Whodunit)は「誰が犯人か」を追う。ハウダニット(Howdunit)は「どうやってやったか」という手口を解き明かす。そしてホワイダニット(Whydunit)は「なぜそうしたのか」という動機に迫る。
犯人がわかっても、手口がわかっても、動機がわからなければ腑に落ちない。逆に動機がわかった瞬間、すべてのピースが一気につながる感覚がある。それは、動機が「人間そのもの」だからだ。
つまり、ホワイダニットとは犯罪小説の一ジャンルではなく、人間の本質に迫る問いの形式なのだ。
「Why」を持たないクリエイターの末路
サイモン・シネック(Simon Sinek)は著書『WHYから始めよ!』の中で、ゴールデンサークル理論を提唱した。
クリエイターに置き換えてみると、よくわかる。
「何を作るか(What)」は決まっている。「どうやって作るか(How)」もスキルがあればできる。しかし「なぜ作るのか(Why)」が曖昧なまま動いているクリエイターは、方向を見失いやすい。
納期に追われ、クライアントの要望をこなし、気づけば「誰かのために作っている自分」だけが残る。それ自体は悪いことではない。しかし、Whyがなければ迷ったときに立ち戻る場所がない。消耗したとき、踏ん張れる理由がない。
結果として、燃え尽きる。
動機は設計図であり、燃料である
制作ギルド(Qrious)を立ち上げたとき、メンバーに最初に聞いたのは「何ができるか」ではなかった。「なぜ作ることが好きなのか」だった。
スキルは後から伸ばせる。しかし動機は、最初から自分の中にあるか、ないかだ。Whyを持っているクリエイターは、迷ったときに立ち戻れる座標を持っている。それが設計図としてのWhyだ。
そしてWhyはもう一つの顔を持つ。それが燃料としての機能だ。「なぜ自分はこれを作るのか」が腑に落ちてるクリエイターは、しんどい局面でも手が止まりにくい。動機がエンジンになるからです。
ホワイダニットのミステリーが動機を暴いた瞬間に読者の心が動くのも、同じ理由だと思う。人は「なぜ」に共鳴する生き物だ。
だから問いたい。あなたはなぜ、作るのか。
ちなみに…
「Whodunit(フーダニット)」という言葉が初めて活字になったのは1930年のアメリカのパルプ雑誌とされている。”Who done it?”——「誰がやったんだ?」という文法的に崩した口語表現が語源だ。正しくは”Who did it?”だが、そのぶっきらぼうな響きがミステリーファンの間に広まり、そのまま定着したようです。
ちなみに刑事コロンボは犯人が冒頭から明かされる「倒叙ミステリー」の形式を取っており、フーダニットでもハウダニットでもない。あの番組の本当の面白さは、コロンボが犯人の動機と心理を丁寧に紐解いていく過程——つまりホワイダニットにあるのです。
ホワイダニット
というお話でした。
~ 本文で参考にした書籍をご紹介 ~
(参考・出典)

ゲツコーギルド合同会社 CEO兼プロデューサー
東京下町→瀬戸内の離島に移住→江戸に戻ったWEBプロデューサー::クリエイティブコンサルタント。フリーランス制作ギルドと育成プロジェクト運営。ボーラーハットと変身ベルトがトレードマーク。個人的には懐古的なモノがスキ。ネガティブ属性だがユーモアを忘れない。