恩贈り

恩贈り ~ 情けはだれのため

恩贈(送)り

Pay it forward

かつてお世話になった人が困っている時に手助けすることを「恩返し」って言いますが、こういう感情や行いは尊いので、決して忘れちゃいけませんよね。でも今回は恩返しではなく『 恩 贈(送)り 』というお話。

きっと聞き慣れない言葉ですよね。この言葉を知ったのは、 映画『 ペイ・フォワード 可能の王国 』で、主人公の少年が社会科の課題に対して出したアイデアを見たときなのです。

社会科の授業で「今日から世界を変えてみよう」という課題を出される。

少年が考えた奇想天外なアイデアは、人から受けた厚意をその相手に対して恩返し(pay back)するのではなく、別の誰かにその恩を送る(pay it forward)ことで、善意を広げていけば世界が変わるんじゃないか?というもの。

まだピンと来ませんよね。例えば、困ってる人を探して手助けをします。助けてもらった人は、自分にお返しをしようとしますが、その時に「私はいいので別の困っている人を助けてあげて」と言います。これが恩送りです。

主人公の少年は、助けられた人がさっき恩を送ってもらったから、「何かお困りじゃないですか?」といつも気にかけ、困っている人が居れば助け、恩返しを断り「私はいいので~」ということが繰り返されれば、世界は変わると言っているのです。

しかし、そう上手くいくものだろうか。劇中でも、なかなか上手く広がっていきません。ところが、あることがきっかけでその輪が広がっていきます。そのきっかけは実際に見ていただくとして、噂が噂を呼び、人に伝播する様子はSNSの広がり方によく似ています。

少年は恩贈(送)りをどう広げていくか考えます。

発表した内容は1人が3人に恩贈(送)りをすれば、それはどんどん広がっていくという方法でした。これは以前、本ブログでも書いた『 六次の隔たり(
Six degrees of separation)
』とよく似ています。

あまり話し過ぎると怒られちゃうので映画の話はここまでにしますが、重要なのは「何かお困りじゃないですか?」と周囲に気を配ること。

情けは人の為ならず

恩の押し売りのように感じるかもしれないが、こういう配慮こそ制作現場に必要で、案件がスムーズに流れているときは問題にならないが、スケジュールがタイトになってくると、とかく自分の都合で他に押し付けようとしてしまいがち。

ディレクター、デザイナー、コーダーがチームで案件を担当する時、お互いが「なんか困ってない?大丈夫?」と少しでも労わることができれば、精神的負担は少なくなるし、そういう環境が根付いていたら仕事も人間関係もスムーズで、制作もしやすいだろう。何よりプロジェクトのリスクヘッジができるので、結果的には事故らず納品できる。

恩贈(送)りをすることで自分自身が変わり、周囲が変わり、環境が変わる。確かにそうかもしれない。
恩贈(送)りは人の為にやっているようでいて、実はその行いが回り回って自身に返ってくるような気がします。

日本でも江戸時代から「恩送り」という言葉があったようです。また「情けは人の為ならず」という言葉がありますが、これは情けは人の為にはならないという意味ではなく、人情は、いずれは巡り巡って自分に返ってくるという意味が込められています。

人のために恩を贈(送)ると思うとシンドイし偽善に聞こえちゃいますけど、自分の為だと思えば、少しは気楽にできるのではないでしょうか。

まずは、自分の近くにいる大切な人に困りごとはないかと、恩を贈(送)ってみてください。

恩贈(送)り

というお話でした。

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