それって誰のため?
For whom?
もうすぐ愛を語らうイベント、バレンタインが訪れます。もうバレンタインネタもなくなってきたので来年は書かないぞと思いながら今年も書いています。今回は既に有名な話を短くサラッと済ませようと思います。それって誰のため?っていうお話。
バレンタインと言えばチョコレート。普段あまり自分で買って食べないし、買ったとしてもコンビニやスーパーで売られてるごくごく一般的なものなので、以前も書いたとおりチョコレートをプレゼントする習慣って悪くないなぁと思います。一粒何百円もする高級チョコレートは自分で買うもんじゃなく人から貰うもんだと僕は思ってるから質が悪いですね。
高級チョコレートでお馴染み、ベルギーの老舗チョコレートブランド『 GODIVA 』。ロゴや社名の由来にまつわるエピソードはあまりに有名で、ここで語るのは今更感が否めませんけど、一応ご存知ない方のためにかいつまんでおきます。
小さな町の領主レオフリック伯爵は野心家で、豊かで文化的な都市に発展させるべく、公共事業を積極的に行い、その都度重税を課し領民を苦しめていた。
それを見兼ねた心優しい妻レディ・ゴディバは、伯爵に税を引き下げるよう何度も訴え、議論に疲れた伯爵は妻に条件を出す。「もしおまえが一糸まとわぬ姿で馬に跨り町中を廻れたなら、その時は税を引き下げて建設計画を取り止めよう。」
翌朝レディ・ゴディバは一糸まとわぬ姿で町中を廻り、領民たちはそんな彼女の姿を見ないように窓を閉ざして敬意を表した。
そう Lady Godiva(Lady Godiva、990年頃 – 1067年9月10日?)は実在した伯爵夫人。
伯爵は約束通り税を引き下げました。
粋な中に、野暮な奴が
この話にはサイドストーリーがあります。
登場人物がみんな「粋」な行動をとる中で、ただ一人「野暮」な奴がいました。
これも有名な話ですが、領民が窓を閉ざしてレディ・ゴディバに敬意を表していた中、こっそりその光景を覗き見ていたトムという男がいます。
なて野暮な奴だ…と思いつつも、一方で男として憎めないし同情を禁じ得ない。
このトムという男はこの後、罰が当たって盲目になるという結末なんですが、このトムは後世でのぞき魔の代名詞となる「ピーピングトム」と呼ばれることとなります。
真偽のほどはわからない話ですけど無粋な奴への天罰だろう。
誰のため?
領主は小さな町を文化都市にすべく、信心深いこともあって大聖堂を建てました。そこに人が集まり情報が集まりランドマークとなり、それをキッカケに様々な施設を建築し、それを増税で賄おうと考えていました。野望があったとしても方法が間違っていたとしても。
レディ・ゴディバはそれを領民の負担にすることに心を痛めて辞めるように進言し、大義のための自己犠牲を覚悟しました。そしてそれを知った領民は、せめて自分たちが出来ることをと窓を閉ざして目をつぶったわけです。
これはいったい誰のために起きたことなのか…本質は?
ダメな代表者や指導者を参謀がいさめる。
正しい組織の手本のようだ。ダメな代表者じゃなかったら尚いい組織だが、自浄作用が機能する組織とはこういうものだろうと思います。
このケースは身内ですが、身を挺してでも止める者がいなければストーリーは一転、裸の王様になるところです。そうはなりたくない。
後世、このエピソードに感銘を受けて社名とロゴに採用したのがベルギーの高級チョコレートのGODIVAです。
深い愛で領民のために身を挺して増税を止めたレディ・ゴディバは、時を超えて高級なチョコレートブランドとして蘇ると誰が予測していたでしょうか。
ただ、今では特別な日や贈り物としてしか庶民が口にできないプレミアムなチョコレートになってしまったことは、何たる皮肉だろう…そう思うのはひがみだろうか。
そんなことを考えながら、小さい時から慣れ親しんだ安いハート形のピーナツチョコを頬張ることにします。
それって誰のため?
というお話でした。
~ 本文で紹介された書籍をご紹介 ~
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ゲツコーギルド合同会社 CEO兼プロデューサー
2016年に東京下町から瀬戸内の離島に移住。クリエイターの働き方や人財育成、再生、地域でのクリエイティブやICTを活用したブランディングや地域創生、事業再生を得意としたプロデュースやディレクションで活躍中。メガネ&広島弁や伊予弁など方言女子が大好物。個人的には懐古的なモノがスキ。ネガティブ属性だがユーモアを忘れない。1970年 江戸下町産。