老人と海
The old man and the sea
日々の勉強が欠かせないこの業界で、食べていくために必死で様々な技術を習得しようと脇目も振らずに突き進む。しかしその技術を習得することがいつしか目的となってしまい、技術を習得したことで満足しちゃうことってありませんか。今回は ココから本番 というお話。
巨大カジキと残された骨
今回は、アーネスト・ミラー・ヘミングウェイ(米:Ernest Miller Hemingway、1899年7月21日[1] – 1961年7月2日)の名作『老人と海』をこの業界に重ねてみたいと思います。読んだことがない方のために、かいつまんでご紹介しましょう。
年老いた漁師は84日間、不漁が続いていた。助手の少年が用意してくれるちょっとした食事と朝のコーヒーだけで過ごす日々が続き、少年も40日を過ぎたころから親の命令で他の船を手伝うことになる。
85日目、ついにカジキマグロを釣り上げる。しかし、仕留めた獲物が大物すぎて船に揚げることができない。横腹をモリで突いた状態で引きずりながら、海岸へ戻ることになった。
陸へ向かう途中、サメに何度も襲われる。港に辿り着いた時には、巨大で良質なカジキマグロは骨だけになっていた。
参考:ヘミングウェイ 著:『老人と海』 より
何ともやりきれないストーリーです。
余裕で一冬越せるだけの大物を久しぶりに釣り上げた。それなのに、一人で船に揚げる術がなかった。とうとう骨だけを残して根こそぎ持っていかれる。老人にとっては、泣くに泣けない状況です。
大事なのは”それから”
冒頭の問いかけのように、みなさんも食べていくために必死で技術を習得し、情報収集しているはずです。しかし、それはあくまで手段であって、目的ではありません。
習得した達成感のまま止まってしまうと、気づいたときには手元に何も残っていない。そう、カジキマグロのように。
『老人と海』で肝心なのは、「それから」だと思います。カジキマグロを釣り上げたものの、それをどうやって無事に港まで連れ帰るか。そこからが新たな挑戦です。
たとえば、スキルアップや情報収集を目的にセミナーやイベントに参加するとします。しかし、参加しただけではスキルは上がりません。交流だって深まらない。ただそんな気がするだけで、実際には参加前とあまり変わっていない。
問題は、イベントに参加した後です。その経験をどう活かすかを考えて、行動することが大切なのです。
孤独との闘い
『老人と海』から学ぶことは、まだあります。
不漁が続いて40日を過ぎると、助手の少年が来なくなります。老人は独り言が増えていることに気づきます。これではダメだ、全部自分でやらなきゃダメなんだ、と。
「あの子がついていてくれたらなあ」と独り言を口にするが「何を言うんだ、お前には少年はついていないんだ」と老人は思い直す。
出典:ヘミングウェイ 著:『老人と海』 より
「お前にはただお前だけしかついてはいない。なんとしてでもやるんだ、さあ、いますぐ」
フリーランスになると、こういう気持ちになる人は多いでしょう。誰にも頼れない。誰も助けてはくれない。自分で解決しなきゃいけない。自分を鼓舞するために、弱音を打ち消すように声に出したこともあるかもしれません。
僕自身、弱気になることは何度もあります。それは今もある。その度に弱い自分を振り払うように頭を振り、膝を叩いて立ち上がり、自分に言い聞かせるのです。誰も変わってはくれない。自分でやるしかない。ダイジョブ、今まで乗り越えてきたじゃないか、と。
一方で、老人はカジキマグロが骨だけになっても、意外な反応を見せます。
老人は陸に戻り、「みんな、俺を探しに出たかい?」と少年に聞くと、「ああ。沿岸警備隊と飛行機が出たよ」などと応えた。老人は会話をするうちに、話し相手がいることがどんなに楽しいことかを理解する。
出典:ヘミングウェイ 著:『老人と海』 より
フリーランスになると、孤独に作業することが多くなります。親しい人たちと時間が合わなかったり、相手が忙しかったりして、結局ひとりでいることが増える。SNSが唯一の社会との接点という人も、少なくないでしょう。
また、音楽やラジオを聞き流しながら、ふと気づくと独り言をつぶやいている。凹みすぎて逆に笑えることすらある。自由に動けるはずなのにスケジュールに縛られたり、残した仕事が気になって出かけられなかったりする。これが、フリーランスならではの孤独です。
老人は海上でたったひとり、カジキマグロと格闘しました。サメとも何度も格闘した。それ以前にも84日間の大半を、ひとりで漁に出ていた。さぞ孤独で、怖かっただろうと思います。
カジキマグロをサメに横取りされたことよりも、少年と会話できたことにホッとした老人の姿。その気持ちは、フリーランスのそれと重なります。
ちなみに…
ちなみに、『老人と海』は1958年に映画化されています。主演はスペンサー・トレイシーです。
このとき、ヘミングウェイ自身が「本物の巨大カジキを釣るシーンを撮るべきだ」と主張しました。撮影チームと共に数ヶ月も海に出たほどです。結局、映画の大部分は模型や合成映像になりました。それでも、「本物でなければ伝わらない」 という彼の執念は、今日のクリエイティブや制作に通ずるものがありますね。
老人と海
というお話でした。
この小説は、いろんなことを考えさせてくれます。みなさんはどんな環境で働いていますか。毎日不安の中、孤独に作業していませんか。もし老人と同じような気持ちのクリエイターがいたら、Qrious(キユリアス)があることを覚えておいてください。
~ 本文で参考にされた書籍をご紹介 ~
(参考・出典)