生活のための仕事が、夢を遠ざける
Chicken or egg problem
仕事が増えれば、生活は安定します。しかし、忙しくなるほど、自分が本当に創りたいものから遠ざかっていく。こんなケースはないでしょうか。実績を積んでから挑戦するのか、それとも創りたいものを形にしてから仕事を広げるのか。どちらにも理由があるからこそ、簡単には決められません。今回は、「ジレンマ(Dilemma)」のお話。
クリエイターを悩ませる、仕事と創作の矛盾
あるクリエイターが、制作会社を辞めてフリーランスになると決めました。
幸いなことに、以前の仕事仲間や知人から案件を紹介してもらえました。会社員時代の人間関係や時間的な制約からも解放され、フリーランスとして順調なスタートを切れたのです。
好きな仕事で生活できるのですから、申し分のない滑り出しです。
ところが、しばらくすると新たな問題が見えてきました。
紹介される案件は、単価が安く、納期も短い。生活を維持するには、次々と仕事をこなす必要があります。気がつけば、毎日が納期との戦いになっていました。
本当は、自分の作品を創りたい。新しい表現にも挑戦したい。しかし、目の前の仕事を片づけるだけで一日が終わってしまいます。
フリーランスとしては成立していても、クリエイターとしては満たされない。そんな矛盾を抱えてしまうのです。
クリエイターは、何を先に手に入れるべきか
この問題を「鶏が先か、卵が先か」に置き換えて考えてみます。
フリーランスとして仕事を確保するのが先か。それとも、クリエイターとして評価される作品を生み出すのが先か。
どちらにも、それぞれの考え方があります。
まず、仕事を先に確保する方法です。安定した収入を得ながら実績を積み重ね、少しずつ自分の目標へ近づいていきます。生活基盤を整えられるため、現実的な選択といえるでしょう。
一方で、作品づくりを先に進める方法もあります。自分の強みや世界観を作品として示し、その成果をもとに仕事を獲得していく考え方です。
ただし、作品が評価される保証はありません。収入が安定するまで、時間がかかる可能性もあります。
つまり、どちらを選んでも、リスクはあります。重要なのは、世間で語られる成功法則を、そのまま自分に当てはめないことです。
必要な準備も、生活環境も、人によって違います。だからこそ、自分にとって許容できるリスクを見極める必要があります。
クリエイターが、現状を変えるためにできること
では、仕事に追われて創作の時間が取れない場合は、どうすればよいのでしょうか。
まず、現在の働き方を見直してみます。案件数を増やすことだけが、収入を増やす方法ではありません。単価を見直すことも、得意分野に仕事を絞ることも選択肢になります。
次に、創作活動を「時間が余ったらやること」にしないことです。忙しい日々の中で、空いた時間が自然に生まれるのを待っていても、なかなか状況は変わりません。
週に一度でも、毎日15分でも構いません。自分のために使う時間を、先に予定へ組み込んでみてください。
もちろん、すぐに理想の働き方を実現できるとは限りません。それでも、小さな作品を完成させることはできます。公開できる作品が増えれば、自分の得意分野や進みたい方向も見えやすくなります。
生活を支える仕事と、自分が創りたいもの。その両方を大切にするためには、働き方そのものを少しずつ変える必要があります。
大切なのは、どちらか一方を永遠に選ぶことではありません。今の自分に必要なものを見極め、次の一歩を決めることです。
ちなみに…
「鶏が先か、卵が先か」という問いは、古くから原因と結果の関係を考えるために使われてきました。片方がもう片方を生み出すはずなのに、どちらが先なのかを考えると、堂々巡りになってしまいます。
しかし、生物の進化という視点から考えると、少し違った景色が見えてきます。
現在の鶏が誕生するより前にも、鶏の祖先にあたる鳥は卵を産んでいました。長い進化の過程で生じた変化によって、現在の鶏につながる個体が現れたと考えられます。
つまり、「鶏が先か、卵が先か」は、何を鶏と呼び、何を鶏の卵と呼ぶかによって答え方が変わります。生物の進化という意味では、卵が先と考えられるのです。
この話は、クリエイターの働き方にも通じます。
仕事があるから作品をつくれるのか。作品があるから仕事を得られるのか。どちらか一方だけが正解とは限りません。
仕事を通じて身につけた技術が、作品づくりに活きることもあります。反対に、自主制作で磨いた表現力が、仕事の幅を広げることもあります。
また、フリーランスとして独立したからといって、必ずしも自由になれるわけではありません。自分で仕事を選べる立場になっても、収入への不安から、断りたい案件を引き受けてしまうことがあります。
自由を手に入れることと、自由に生きられることは別の話です。だからこそ、目の前の仕事をこなすだけでなく、自分が何のために働いているのかを考える時間も必要になります。
夢を叶えるために働くのか、働くために夢を見るのか
鶏が先か卵が先か
というお話でした。
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参考・出展

ゲツコーギルド合同会社 CEO兼クリエイティブ・コンサルタント
約30年ほど前、インターネットの黎明期から企画・マーケティング、システムやネットワーク開発など、文字通りWEB業界を創ってきました。徐々に大規模プロジェクトが増えたことに伴い、プロデュースやディレクション、コンサルティング、マネジメントを求められるようになり、東日本大震災をきっかけに、フリーランスの地位向上と働き方の創出のために制作ギルドを創立。配信やセミナーなど育成や再生も開始し、デザイナーやコーダーはもちろん、ディレクターやプロデューサーも数多く輩出しています。