サンタクロースのモデル
Saint Nicholas
クリスマスの夜、子どもたちはサンタクロースを待つ。しかしそのサンタクロースには、モデルになった実在の人物がいる。3〜4世紀のギリシャ人司教、聖ニコラウスだ。彼は貧しい家の娘たちのために、名も告げず夜陰に紛れて金貨を投げ入れた。今回は それでも動く理由というお話。
金貨を投げた男
3〜4世紀、現在のトルコ南部にあたるリキアのミラという街に、ニコラウスという司教がいた。裕福な家庭に生まれたが、両親を早くに亡くし、その遺産をすべて貧しい人々のために使ったとされる人物だ。
彼の伝説の中で最も有名なのが、「三人の娘」の話だ。
近所に、結婚持参金を用意できないほど貧しい父親と三人の娘がいた。持参金がなければ娘たちは嫁ぐことができず、身を売るしかない境遇だった。それを知ったニコラウスは、深夜に娘たちの家の窓から金貨の入った袋を投げ入れた。しかも三度にわたって。
父親が正体を確かめようとしたとき、ニコラウスは「誰にも言わないでほしい」と告げて立ち去った。
名前を残すためでも、感謝されるためでもない。ただ、困っている人がいたから動いた。それだけの話だ。
現場を支える見えない手
Web制作でも、ニコラウスのように立ち回る役割の人が居ます。
ディレクターやプロデューサーがそうだ。ディレクターやプロデューサーが、スケジュールの調整やクライアントとの折衝、チーム間の橋渡し、作業の前倒し、リスクの先回り——などの作業を、キッチリと、うまくやればやるほど「そこには何もなかったこと」に見えるという、不思議な仕事です。
プロジェクトがスムーズに進んだとき、「ディレクターのおかげだ」と言われることはほとんどない。むしろ「スムーズだったね」で終わる。炎上しなかったこと、誰かが傷つかなかったこと、締め切りが守られたこと——それらはすべて、誰かが夜陰に金貨を投げた結果にもかかわらずです。
つまり功績や名声が残らなくても、仕事の痕跡は確かにそこにある。そのスムーズに進んだプロジェクトの裏に、現場が回り続ける理由、見えない手があるのです。
問いを立て続け、そして手を打つ
ニコラウスが金貨を投げたのは、見返りを期待したからではない。目の前に困っている人がいて、自分には力があった。ただそれだけ。ディレクターやプロデューサーも同じだろう。
「このままではチームが壊れる」
「このクライアントは本当は何を求めているのか」
「このメンバーは今、何に詰まっているのか」
——そういう問いを、誰に頼まれなくても立て続ける。そして静かに手を打つ。
感謝されないことへの耐性は、最初から持っている人などいない。しかし「自分がやらなければ誰かが困る」という感覚が、使命が、動く原動力となっている。それはプライドでも自己犠牲でもなく、ただの職業的な誠実さなのです。
ニコラウスは後に聖人に列せられ、サンタクロースという形で今も世界中の子どもたちに届けられ続けています。名を名乗らなかった男の仕事が、1700年後も語り継がれている。それで十分ではないか。
ちなみに…
「サンタクロース」という名前の由来は、聖ニコラウスのオランダ語読み「シンタクラース(Sinterklaas)」が英語圏に伝わり、「Santa Claus」に変化したもの。つまりサンタクロースとは、そのまま「聖ニコラウス」のことなんです。
また聖ニコラウスは、子どもの守護聖人であると同時に、船乗り・商人・質屋・薬剤師など、様々な職業の守護聖人でもあるんです。縁の下で多くの人を支えた生涯が、そのまま守護の幅に反映されているようで、なんとも彼らしいですね。
聖ニコラウス
というお話でした。
メリークリスマス!
日本ではあまり馴染みがないですが、ヨーロッパ各地で「黒いサンタクロース」という存在が、サンタクロースの傍らに居るという記事を書いてます。こちらも是非、読んでみてください。
~ 本文で参考にした書籍をご紹介 ~
(参考・出典)

ゲツコーギルド合同会社 CEO兼クリエイティブ・コンサルタント
約30年ほど前、インターネットの黎明期から企画・マーケティング、システムやネットワーク開発など、文字通りWEB業界を創ってきました。徐々に大規模プロジェクトが増えたことに伴い、プロデュースやディレクション、コンサルティング、マネジメントを求められるようになり、東日本大震災をきっかけに、フリーランスの地位向上と働き方の創出のために制作ギルドを創立。配信やセミナーなど育成や再生も開始し、デザイナーやコーダーはもちろん、ディレクターやプロデューサーも数多く輩出しています。