パラノイア

パラノイア ~ 妄想する管理者

パラノイア

paranoia

ご存知の方は居るでしょうか。その昔『 パラノイア (PARANOIA) 』というRPGが話題になったことを。アメリカならではのブラックユーモアたっぷりの未来。地下都市を舞台としたコンピュータが支配する世界。今回は、妄想する管理者というお話。

『 パラノイア 』は1984年にWest End Games社から出版されたTRPG。物語の舞台は西暦2291年。全てをコンピュータに管理された核シェルター型の巨大都市 Alpha Complex。そう、コンピュータが住民(人間)を管理するという、よくありそうなSFの世界。

Alpha Complex はユートピア。人々はみな幸福に暮らしている。

Alpha Complex の外は、悪の共産主義者が Alpha Complex の破壊を目論んでいるため、門を堅く閉ざし、外部との連絡を一切絶っている。

そのため Alpha Complex の人々は、生まれてから一度も外に出たことがない。

さらに、Alpha Complex の人々の中にも反逆者が混じっていて、彼らは共産主義者と通じており、普段は忠実な市民に化けていて、Alpha Complex の破壊を目論んでいるので、人々は反逆者を見つけ次第、処刑しなければならない。

参考: 『 パラノイア 』 より

だが、よくある設定と大きく違う点が…そう信じて疑わないユートピアは、実はコンピュータの妄想。外界と遮断されている地下都市 Alpha Complex は、コンピュータが信じて止まないユートピアとは程遠い、真逆のデストピア。

タイトルの『 パラノイア 』とは「妄想狂」、つまり管理するコンピュータ自体が『 パラノイア 』なのだ。

コンピュータは人々が幸福に暮らすために必要なものすべてを提供する。

コンピュータは人々の善き友人であり、コンピュータは常に人々のことを考えている。

従って、人々はみな幸福でなければならないし、もし幸福でないというものが居たら、それこそ反逆者である証拠。粛清されなければならない。

コンピュータの言うことは常に正しい。だからコンピュータの言うことに疑念を抱き、従わない者は即刻処刑する。

参考: 『 パラノイア 』 より

コンピュータはそう思い込んでいる。

ここまで読んでもらって、あれ?って思った人はいないだろうか。
何かに似てる気がしませんか。

これってウチの会社じゃね?

現実世界にも似た様な環境が

外界と隔離する企業はないと思いたいが、所謂ブラックとかベンチャーって呼ばれる企業に、こういう傾向が多そうな印象がある。もしかするとコンピュータに支配されてるのだろうか。

少し脱線するが、AIがもっともっと浸透して、AI社長とかAI上司みたいな企業が出てくると、感情なんかよりも合理的に選択して、こういう事態が近い将来有り得るかもなぁと思ったり思わなかったり。

話を戻すと、Alpha Complex はコンピュータが管理する都市だが、ビジネスに置き換えると今のところは人が管理する企業ということになろう。社長や上司が従業員の幸福を1mmも疑わずに、パワハラやらモラハラをやらかしてることと、コンピュータの妄想とが見事にシンクロする正にデストピア。

それだけじゃない。コンピュータは人々にお互いを監視させ、反逆者を早く見つけられるように命じる。これもブラック企業や隠ぺい体質の組織ではよくあることで、問題が表面化しにくい点でシンクロしている。どちらもリアルで起きてるだけに罪深い。『 パラノイア 』の中で、こんな有名なセリフがある。

幸福は義務です

Happiness is Mandatory.

幸福を一方的な主観で押し付けてくるあたりがコンピュータらしいが、このナンセンスがブラックユーモアとして笑える。しかしもしリアルでも一方的に価値観を植え付けようとする体制に身を置いている人が居るとしたら、そういう環境が正常でないことに早く気付いて欲しいし、一刻も早く外界に出ていくことをオススメしたい。

長い間ストレスにさらされると、回復はその倍以上掛かるという統計も出ている。正常な判断ができるうちに『 パラノイア 』から逃げ出そう。

最期にAlpha Complex のコンピュータはこんなことも言ってる。

秘密結社に参加する者もみな反逆者。コンピュータに公式に認められていない組織はみな秘密結社であり、それに参加する者はコンピュータに対し陰謀を巡らしていると判断する。

そう、「秘密結社 Qrious」は管理者に反旗を翻し、正しいことを正しいと主張する反逆者組織なのだ。

さて、みなさんはいったい誰が『 パラノイア 』だと思いますか。

パラノイア

というお話でした。

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