パンドーラーの匣
Pandoras box
一度は聞いたことがあるとっても有名なギリシャ神話の話で、よく耳にするフレーズだと思うが、周りの人にちょっと聞いてみたところ、どんな内容なのかを正確に把握してる人が意外と少なかったので、今回は有名なギリシャ神話から、希望を持つというお話。
パンドーラー(古典ギリシア語:Πανδώρα)が、絶対に開けてはいけないとされる匣(はこ)を開けてしまい、病苦、悲哀、嫉妬、貪慾、猜疑、陰険、飢餓、憎悪など、あらゆる不吉の虫が匣から飛び出し、それ以来、人間は永遠に不幸に悶え苦しむことになった。
しかし、その匣には最後にもう一つ「希望」という虫も残されていた。
そのおかげで人間は「絶望」せずに済んだという。
これをこの業界に当てはめてみよう。
デザイナー、コーダー、ディレクター、営業など内部の人間関係やクライアント、代理店など外部との人間関係によるストレス、満足感や達成感が得られずインセンティブもメリットも感じられない仕事の数々、会社の扱いや報酬、サービス残業、休日出勤などの不満などなど、不幸な虫は日常的に自分の周りを飛び回っている。
時間的余裕どころか時間の感覚すら麻痺していく有様。これは「絶望」ではないか? いいや「希望」はまだある。多くのクリエイターやエンジニアはこの「希望」によって生かされていると言っても過言ではない。それはフリーランスという道だ!
まだ20代前半の若い人なら、今の会社や働いてる人間がおかしいだけで、転職して再出発すれば不幸な虫は無くならないまでも、数は減るだろうとポジティブに思えるだろう。まぁそれも数ヶ月で打ち砕かれるが、それでもまだフリーランスという道が残されている。
フリーランスになれば、同僚や先輩のいい加減なディレクションやセンスの悪いデザイン、ガッチガチで余裕のないおかしなオリジナルコーディングを見たり感じたりしなくていい。いつ働こうが、いつ休もうが、関わった案件のすべてが自分の収入になるんだから、もうナニモノにも縛られず自由に好き勝手にできるようになるはず。
これが希望。そのはずだ!
良くも悪くも守られていたことに気付く
では現実はどうか…今やインターネットやスマホ、タブレットで情報発信をするのは当たり前。特殊な仕事だから規模の大小はあっても仕事自体はたくさんある。
知人からの紹介や仕事のマッチングサイトを利用したりコンペに参加するなどして、条件を除いて考えれば仕事にはありつける。そして実際にフリーランスとして活動をはじめて、割と早い段階で気付くのだ。
あれだけ嫌っていた会社や他の職種の人たちが、客先やチーム内でどんだけストレスを抱えていたのかを。どれだけ会社という組織が自分の後ろ盾になっていたかを。
それを全部自分一人で引き受けるとなった時、自身の力不足加減や不甲斐無さ、交友の狭さや人脈、人望の薄さに愕然として、あんなことも、こんなことも遣りたいと思っていた事がどんどん遠ざかっていくことに。
割に合わない仕事を数多くこなし、どうにか生活費を確保するだけで精一杯。 人との交流も減り、情報難民になり、軽い引きこもり状態で自分のできることだけをコツコツと積み重ねる。勤めていた時とは別の種類の不幸の虫たちが、周りを飛び始めていることに。
おおよそ一般の人が考えるクリエイターのイメージとは掛け離れている様に思える。やはりクリエイターは時間や心にゆとりをもって、いろんなものを見たり聞いたり、学んだり、教わったり、いろんなことをスポンジのごとく吸収し、必要なものだけを咀嚼して新たなオリジナルを創り出すのがクリエイターのイメージだと思うが、大部分のクリエイターはそうではない。
予知できていたら道は違ったか
ちなみに、ギリシャ神話の解釈には「希望」のほかに「予知」という虫が残っていて、そのおかげで「事前に最悪な事態を回避できる」という説もある。
もし会社員として勤めている時に今の自分を「予知」できていたら、フリーランスにはならなかったか…いいえ、ある程度は予知できていたはず。
「希望」が上回ったからこそ、決断してフリーランスになったんだろう。
だとしたら今の状況はホントに「絶望」なのか。
ある人は再就職することが「希望」につながると考えるかもしれない。実際、フリーランスを諦めて、再就職するケースは少なくないし、それを否定したりしない。
またある人は、今の状態からアクションを起こすチャンスを伺っているかもしれないし、今の状態から抜け出すために、もがき苦しんでいる最中かも。
いずれにしても「希望」を見いだせないと先へは進めない。
独りで考えていても「希望」を見いだせないときは交流会などに参加して悩みを共有してみるのもいいかもしれない。
同じような悩みを抱える人は多いし、人とのつながりは心細さを軽減してくれるし、少なくとも独りじゃないことを実感できる。
出逢い次第では働き方に変化が起こるかもしれない。
きっと手はある。
匣の底に何かを残してくれているはずだ。
諦めてしまうのはまだ早い!
「絶望」するのはもう少し先に取っておいてください。
パンドーラーの匣
というお話でした。
~ 本文で紹介された書籍をご紹介 ~
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ゲツコーギルド合同会社 CEO兼プロデューサー
2016年に東京下町から瀬戸内の離島に移住。クリエイターの働き方や人財育成、再生、地域でのクリエイティブやICTを活用したブランディングや地域創生、事業再生を得意としたプロデュースやディレクションで活躍中。メガネ&広島弁や伊予弁など方言女子が大好物。個人的には懐古的なモノがスキ。ネガティブ属性だがユーモアを忘れない。1970年 江戸下町産。