死ぬ瞬間

死ぬ瞬間 ~ クリエイターが社畜になる日

死ぬ瞬間

On Death and Dying

みなさんは死の宣告を受けたことはありますか。唐突に何ちゅうことを!って思うかもしれませんけど、人生だけに限らず物事には寿命というものがあります。生きながら死んでるということだってあるかも。どういうことか…今回は死ぬ瞬間というお話。

人は生まれたときから死に向かっています。生まれるときに寿命を手渡され、環境などによってそれぞれの寿命の長さはさまざまです。

でも寿命って何も人の生死に限ったことではないんですよね。例えば食べ物には旬や消費期限がありますし、スポーツ選手にも活躍できる時期があってピークを境に衰えていく選手生命というものが存在します。これらは言ってみたら寿命ですよね。ある時期を境に終末に向かっていく様子は人生と似ています。
この業界のクリエイターやエンジニアにも同じことが言えるでしょう。

アメリカの精神科医 エリザベス・キューブラー・ロス女史(独:Elisabeth Kübler-Ross、1926年7月8日 – 2004年8月24日)の著書に『死ぬ瞬間』という本があるのをご存知でしょうか。自分の死を受け入れるのに5段階のプロセスがあるという画期的な説を本で紹介し、死や死に方について、いまや医療現場でも引用されることがあるとか。

その死を受け入れるまでのプロセスとは、

否認 - 予期せぬ事態に、そんなわけないと否定しようとする

怒り - 現実を認めざるをえなくなると、怒りや恨みがこれに取って代わる

取引 - 次に神や仏に対して、自分がどうしたら延命できるか取引し始める

抑うつ - それらが無駄であることを知ってうつ状態におちいる

受容 - 来たるべき自分の終焉を静かに見つめることができる段階に入る

この5段階を経て受け入れられるようになるというものです。必ずしも5つセットとは限らず、途中までの人もいれば途中からの人も居ると本の中では解説されています。

これをクリエイターやエンジニアなど、この業界に当てはめてみると何と見事にハマるではないか!こんな感じでやってみました。

否認 - 予期せぬ事態に、そんなわけないと否定しようとする
「みんな仕事してるのに、まさか上がらないよね?」とか「まだ今日のノルマはクリアできてないから泊りだね」とか「土日も出てね」「早出してね」とか指示通りに創ったのに「イメージと違った、やっぱりこっちで」ってひっくり返されたりとかとか・・・え?なに?ウソでしょ?ってなる。     

怒り - 現実を認めざるを得なくなると怒りや恨みがこれに取って代わる
「は?自分の仕事は終わったし、何で帰ろうとすると嫌味言われんの?つか、自分の仕切りが悪いからこうなってんのに、お前は帰んのかよ!」     

取引 - 次に神や仏に対して自分がどうしたら延命できるか取引し始める
「神様、どうかあいつが大失敗をやらかしてクビになるようにしてください。仏様、どうか僕の腕を超電磁砲にして、あいつを大気圏外まで吹っ飛ばして下さい」     

抑うつ - それらが無駄であることを知って患者はうつ状態に陥る
「会社行きたくない。あいつに逢いたくない、仕事したくない。外出たくない。気持ち悪い。頭痛い。起きられない。眠れない。食べられない・・・つらい」     

受容 - 来たるべき自分の終焉を静かに見詰めることのできる段階に入る
「無駄な抵抗は辞めよう。逆らわずに身を任せて、身をゆだねて生きていこう。社畜として、会社の犬として働こう。そうしよう・・・The End」

社畜物語いかがでしたでしょうか。お楽しみいただけましたでしょうか。

勤めていると会社或いは上司について「諦める」瞬間ってあると思います。でもその「諦める」あとの行動は人それぞれ。その後の経過を辿ってみると末路は大きく分けて3つあるように思います。

1つ目は、前述の例のように「僕が悪かったよ降参。あなたに従いますワン!」と社畜として尻尾を振るケース。

2つ目は、受容できずに抑うつのまま病んで抜け出せなくなってしまうケース。当分社会復帰は難しそう。

3つ目は、取引あたりから徐々に転職またはフリーランスになる目論見をはじめて、時期が来たら辞めるケース。

こう見てみると3番目が一番健全に見えます。何故って3番目だけが自分で自分の将来を決めているからです。冒頭の話に戻すと、もしこれが死の宣告だとしたら3番目だけが尊厳死になると思うわけです。
1番目も2番目も自分が意図したものじゃなく、仕方なく流された結果だとしたら、それは自殺行為ということにはならないだろうか。そう考えるとやりきれない。

こうなってはクリエイターやエンジニアとしての寿命は尽きたも同然。つまり生きながら死んだも同然です。
折角ヤル気や希望、夢、目標をもって入社したのに、それら全てを一蹴して消し去る会社の体質、業界の体質には辟易とします。2番目などは場合によっては文字通り、自傷行為に発展するケースやトラウマとして残ったりするケースも少なくないでしょう。

みなさんはどのタイプでしょうか。社畜かうつ状態かそれとも勇気ある逃走か。

この機会に自身のクリエイター、エンジニアとしての寿命について考えてみてください。この先もこのままでいいのかどうかを。

死ぬ瞬間

というお話でした。

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