ソル・インウィクトゥス

ソル・インウィクトゥス ~ どん底から立て直す

冬至祭

Sol Invictus

クリスマスが12月25日になったのは、偶然なんだろうか。古代ローマではこの日、「ソル・インウィクトゥス(Sol Invictus)」——無敵の太陽を祝う冬至祭が盛大に行われていました。一年で最も夜が長い日に「それでも太陽は必ず戻ってくる」と祝った人々の話から、今回は どん底からの再起 というお話。

最も暗い夜に、祭りを開いた理由

古代ローマ人は、冬至を恐れていました。太陽が弱まり、昼が短くなり、このまま闇が世界を覆ってしまうのではないかという感覚が、人々の心に忍び込んでいました。

しかし彼らは嘆くのではなく、祭りを開いたといいます。

「ソル・インウィクトゥス」——直訳すれば「征服されざる太陽」で、3世紀のローマ皇帝アウレリアヌスが国家的な太陽神崇拝として制定し、12月25日をその祭日としました。最も夜が長い冬至のころに「太陽は負けていない」「必ず戻ってくる」と宣言することで、人々の心に光を灯そうとしたのです。

その後、キリスト教がローマ帝国に広まる中で、イエス・キリストの降誕祭がこの日に重ねられていきました。つまりクリスマスの「12月25日」という日付の背景には、どん底の闇の中で光を信じ続けた人々の祈りが、深く刻まれていると言えます。

最も暗い夜だからこそ、光を祝う。 その発想が、2000年近くを経て今も世界中のクリスマスに受け継がれているわけです。

プロジェクトの「冬至」

制作現場にも、冬至がある。もちろん季節の話ではなく、夜がいちばん長い日という意味で。

「リリース直前にシステムが落ちる」
「大詰めでクライアントの方針が変わる」
「コアメンバーが突然抜ける」

こうした「最も暗闇に落ちる局面」は、長くやっていればちょいちょい経験します。そしてそのとき、チームの本質が露わになるのです。

冬至が怖いのは、昼がどこまで短くなるかわからないからだ。しかし「今日が最も夜が長い日だ」とわかった瞬間、明日からは昼が長くなると信じられる。どん底を認識することが、反転の起点になる。

プロジェクトが炎上したとき、「まだ挽回できる」と根拠なく楽観するより、「今がどん底だ」と正確に把握する方がずっと建設的です。現状を直視することが、リカバリーの第一歩に繋がるからです。

リカバリーは「設計」

ただし、どん底を認識するだけでは太陽は戻りません。古代ローマ人が冬至を祝えたのは、「太陽は必ず戻る」という自然の法則を知っていたからです。経験と知識が、祭りを可能にしたのです。

制作現場のリカバリーも同じで、感情的な立て直しではなく、設計としてのリカバリーが必要になります。

まず被害の範囲を確定し、次に、何が回復可能で何が不可能かを仕分けます。そして回復可能なものから優先順位をつけて手を打ちます。この手順を、感情が揺れている最中に粛々と進められるかどうかが、プロデューサーの腕の見せどころだと思っています。

どん底で祭りを開いたローマ人のように、最も暗い局面でこそ冷静に手を打てること。それがリカバリーの設計だと思うのです。

炎上したプロジェクトのほとんどは、最初の判断ミスよりも、どん底で適切な手が打てなかったことによって致命傷に発展します。太陽は必ず戻る。しかしそれを信じながら動ける者だけが、夜明けを迎えられる。

ちなみに…

「ソル・インウィクトゥス」の祭りは、贈り物を交換し、蝋燭を灯し、常緑樹で家を飾る風習を持っていました。現代のクリスマスのプレゼント交換、キャンドル、クリスマスツリーの起源の一つとされる所以です。

また冬至を祝う文化は、ローマに限らず世界各地に存在します。日本でも冬至にゆず湯に入り、かぼちゃを食べる風習があります。これも身を清めて運を呼び込むためだと言われています。最も寒い夜に温かいゆず湯に浸かり、栄養価の高いかぼちゃを食べる——それも一種の、どん底からのリスタートという想いからかもしれません。

ソル・インウィクトゥス

というお話でした。

メリークリスマス!

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(参考・出典)