ルサンチマン
Ressentiment
例えばSNSを開くと、同業者の「華やかな実績」や「キラキラした環境」が目に飛び込んできた時、「ケッ!」と吐き捨てたくなるドロドロした感情を抱いたことありませんか?このドロドロした気持ちの正体は何なんだろう。今回は Web制作に潜む心の毒との向き合い方 というお話。
「酸っぱい葡萄」のその先にある執念
以前お話しした「すっぱいブドウ」は、手に入らないものを「価値がない」と思い込むことで自分を守る、いわば可愛い負け惜しみ、あるいは強がりの類でした。しかし、このルサンチマンはもう少し根が深く、単に諦めるだけでなく、「持っているアイツらは悪で、間違っている」と相手を下げることで、自分の無力さを「正義」にすり替えてしまう心の動きです。
そのドロリとした感情の正体、それは19世紀の哲学者フリードリヒ・ニーチェ(独:Friedrich Wilhelm Nietzsche、1844年10月15日 – 1900年8月25日) が提唱した「ルサンチマン」という、弱者が強者に対して抱く、単なる嫉妬を超えた「恨み」の感情。
主に弱者が、敵わない強者や他者に対して抱く、怒り、嫉妬、怨恨、復讐心が内攻的に鬱積した心理状態のことです。自分の無力さを認められず、相手を引きずり下ろすことで心の均衡を保とうとする負の感情を指します。
Web制作の現場でも負け惜しみ的に、
- 数字重視でデザインを雑に扱うLPには魂がないし、依頼者もリスペクト出来ない
- ノーコードやAIでサイトを作る奴は、そもそもクリエイターとは呼ばない
そうやって他者の手法を叩くことで、新しい技術を学べない自分や結果を出せていない現状を正当化するために、心を落ち着かせてたりしないでしょうか。
自己肯定感と他責ブーメラン
Webクリエイターは常に比較され、自己肯定感が削られやすい職業です。だからこそ、気づかないうち自分を守る防波堤としてその苦しさから逃れるために「制作環境が悪い」「クライアントが分かっていない」「自分を評価しない社会が悪い」と「心の防壁」を築いてしまいがちです。
しかし、ここに大きなジレンマが潜んでいます。
他責にすることで一瞬心は軽くなるかもしれませんが、それは同時に「自分には現状を変える力がない」と宣言しているのと同義。他人を否定し続けることで、自分の市場価値や成長の可能性まで否定してしまう……この「他責のブーメラン」は、いつか必ず自分に跳ね返り、さらに深く自己肯定感を傷つけます。
他人を否定してもデザインの質が上がるわけでも、コードが一行たりとも綺麗になることもありません。自分を守るための盾が、いつの間にか自分の成長を止める壁になっていないか。自分を追い詰める凶器になってはいけません。ルサンチマンの炎は、放っておくと自分自身のクリエイティビティさえも焼き尽くしてしまうのです。
他責という名のブーメラン
Webクリエイターは常に比較され、自己肯定感が削られやすい職業です。だからこそ、自分を守る防波堤として「環境が悪い」「クライアントが分かっていない」と他人のせいにしたくなる。しかし、ここに大きなジレンマが潜んでいます。
他責にすることで一瞬は心が軽くなりますが、それは同時に「自分には現状を変える力がない」と宣言しているのと同じこと。他人を否定し続けることで、自分の市場価値や成長の可能性まで否定してしまう……この「他責のブーメラン」は、いつか必ず自分に跳ね返り、さらに深く自己肯定感を傷つけます。自分を守るための盾が、自分を追い詰める凶器になってはいけません。
その熱量を、自分を研ぐ砥石に変える
もし、誰かに対して激しい「ルサンチマン」を感じたなら、それはあなたが「本当はそうなりたい」と願っている証拠でもあります。その負のエネルギーを、相手を呪うために使うのではなく、自分をアップデートする原動力に変えましょう。
「あいつのやり方は気に入らないが、なぜあんなに支持されているのか?」と一旦は冷静に析する。その瞬間、あなたは「感情に支配される弱者」から、一歩下がって俯瞰する「プロデューサー」へと進化できるはずです。
自分を救えるのは他人の否定ではなく、自分自身への小さな肯定の積み重ねだけなのですから。
ちなみに…
ちなみに、ニーチェはこのルサンチマンを克服した先にある、自らの価値観で生きる存在を「超人」と呼びました。Web業界で言えば、トレンドに一喜一憂せず、かといって古きに固執もせず、自分の哲学を持って淡々と最高のプロダクトをつくる……そんな「超デザイナー」「超コーダー」を目指しましょう!
ルサンチマン
というお話でした。
~ 本文で参考にした書籍をご紹介 ~
(出典・参考)
- 榎本博明『「ルサンチマン」の心理学』(PHP研究所)